感想 小野寺浩二×石黒正数 『ソレミテ それでも霊が見てみたい』1巻及び2巻

 大体の内容「信じてるから見たいんだ!」。眼鏡っ子大好きで知られる小野寺浩二せんせ(以降デラさん)にはもう一つ好きな物がありました。それが心霊現象。なら、見に行かないか! と石黒正数せんせ(以降石黒P)に炊き付けられて、この漫画、というか実地検証レポ漫画が始まります。霊を見たら終了する! と大きく出たのに、単行本が二巻目が出て、まだ連載の方も続いている段階でどうなっているかよくわかる、そんな霊が見たい系レポート漫画、それが『ソレミテ』なのです。
 実際問題として、霊がいるかどうか、というのは全くよく分かっていないのが、現代の現状です。見た事があると言う人も、いやそれはインチキ、勘違いだと言う人も、等分に存在しますが、どちらが本当か、というのは全くの未明の中にあります。そういう現状の中で、この漫画は霊を信じているけど見たことない。だから実際に霊を見たい! というピュアな心でスタートしますが、しかしその道、霊を見る道は大変であり、というか何箇所も、本当に何箇所も心霊現象が起きるとされる場所に行くんですが、ですが……。なのであります。漫画の方はデラさんの漫画力でなんとか楽しめる内容になっていますが、よくよく考えるといい歳した男女が暗い夜道とか山道とかトンネルとかを歩いているだけなんですよね。これが本当に漫画として楽しめるようになっているのは奇跡めいています。
 しかし、この漫画の心霊スポットは大体残念な結果になっています。東京近郊では大体どこかが明るいという霊スポットとしては致命的な状態だったり、あるいはトンネルに人が住んでたりで、ここ出ないわ……。と妙に納得出来ますし、ちょっと遠出してもどっかのイキった奴が落書きしてたりするせいで、やっぱり出ないわ……。と妙に納得出来ます。この残念具合! 2巻では方向性を変えないとヤバイ、打ち切りになる! というので霊視体験までし始める事に。それでも、突撃レポこそこの漫画の華です。全然出そうにないけど華なんです。どうにも生物見つけるパターンが多いけど華なんですったら! と言う事で好きな突撃レポを1巻と2巻でそれぞれ挙げてみましょう。
 1巻は第2夜「千駄ヶ谷トンネル」。相当のレベルの心霊現象が! という前フリからのあまりに明るく、交通量も多く、人も住んでる(婉曲表現)という素晴らしい残念具合が素敵で、これは出ない! というのを確信させられるモノがありました。更に更に泣きのもう一か所「青山霊園」はビルの明かりでやっぱりなんか明るいというのからちょっと暗い所あってここいい! と思ったら更にもう一段、このレポシリーズの基本オチである動物登場(ガマガエル)で幕を閉じてしまいます。初期エピソードながらこのレポ漫画の要素が存分に入っており、1巻からならこれがマストでしょう。
 2巻では第14夜「香川編その二 中村トンネル」。レポ地が石黒Pの取材の関係で香川に、ならその時にやってしまおう! という事で香川編です。その二なので当然その一はありますが、タクシーのじいちゃんのいい人っぷりとイキった落書きにデラさんがきれまくりんぐだったのばかりが記憶に残る回で、霊的な怖さというのは全くない回でしたが、そのじいちゃんドライバーのお話から、このその二へと到達します。そして、そこでちょっとしたホラーとして十分な引き方をして、やばい、のか!? と思ったら石黒Pが毛虫がおる! で一目算に逃げる事に。この積み上げたと思ったらスクラップするこの漫画の仕上がり! と思いましたが、最後にちょっと違う場所の心霊現象の話で、ちょっとゾクッときて終わるので、案外ホラー要素もしっかりしているなあ、と変な感想が出たりしました。
 さておき。
 先に心霊現象の真偽は全く未明だと書きましたが、その中でこの漫画は単純に「ある!」でなく、かといって単純に「ない!」でもなく、あるなら見てみたい! というプリミティブな好奇心で、しかし実際行ってあった! とねつ造するのでなく、とりあえず俺は見れなかった! という立ち位置をしているのが素晴らしい事かと思います。ある、ない、の二元論しかないあわいの無い話題なので、必ずどちらか寄りになるのはどうしてもしょうがないんですが、それでもプリミティブな好奇心と、実際に遭った事を描くという二つによって、霊視回みたいなのもあるので完全ではないにせよ、ニュートラルな視点というのが立ち上がってきているように感じます。こういう取り組み、というのがあるのは、肯定派、否定派、どちらにも益がある事ではないか。そして読者としても益がある事ではないか。そんな戯れ唄をつづってこの項を閉じたいと思います。