感想 クール教信者 『おじょじょじょ』3巻


クール教信者 おじょじょじょ(3)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「妹、地獄巡秋来襲!」。ということで、春さんの妹、秋さんが登場して波乱をもたらし、しかし綺麗に決着するのが、『おじょじょじょ』3巻なのです。
 秋さんも、春さんと同じようにねじくれております。春さんが家督を継ぐ為に勉強し始めた影響で、二人で遊ぶというのがなくなっていき、次第にそれが春さんではなく自分が、という方向に突っ込んでいった、と言う風に話がされます。そして、野望を秘めた者として秋さんは出来上がっていくのです。そうなると春さんの件といい、本当に地獄巡パパンは子供の育成に関しては駄目だったんだなあ、というのがにわかに感じられます。一代で成りあがったがゆえに、どうしても子供にもドライに接してしまうとは、本人の談ですが、確かにいきなり家督を子供に、というには早い時期での発言だよなあ、とも。英才教育には早い方がいいんでしょうが、いくらなんでも状況が悪かったというか。その辺が読めなかった、というのが、地獄巡パパンの問題点だったのでしょうか。秋さんの本心は見抜いていたりする辺り、機微が分かってないって訳でも無かったようなんだけど。
 さておき。
 そんな訳で、地獄巡パパンは頼りにならない、というか積極的にそっちに動かないのですが、それを解決したのは、徒然であります。秋さんの野望を初見くらいで見抜いていたりする辺り流石に訳分かんねえやつらしさが大きいですが、それに対していけないとは言わず、やるならやってみるといい、という地獄巡パパンのように見えて、でもちょっとニュアンスが違う接し方を見せます。このおかげで、紆余曲折するものの、最後には春さんと和解する方向へと向かっていくのですが、この辺りの接し方のニュアンス、というのが大変興味深い。先に書いたように地獄巡パパンの接し方とは違うんですよ。突き放すように見えて、困っていたらちょっと接して上げて、と言う風に動いていて、それについて春さんが嫉妬の炎がメラメラとするくらいなんですよ。この辺がちょっと不思議と言うか、初期の頃の徒然ではあり得なかった、春さんとの間柄が出来たが故に生まれた一種余裕のようなもの、あるいは慈しみのようなものであるなあ、と。周りの人間に対して出来るだけ真正面から接する、というのでしょうか。そういうものが徒然にあるなあと。これは春さんとの関係でやっぱり浮かび上がってきたのかなあ、とか。どうにも家系に特殊なものがあるらしいので、だから今まで世の中を突き離していたのでしょう。でも春さんの存在によって、周りの関係に対して出来るだけのことをする、というのをするようになったのかなあ、とか。
 さておき。
 その春さんですが、学校でぼっちだったのは過去のこととなりました。秋さんとの決戦ということで、学園祭で勝負、となるんですが、いつの間にかクラスメイトと打ち解けておりました。元々スペック高いから、ちゃんとステ振りすれば問題なかったんだ(意訳)。というクリス君の話でさくっとまとめられていましたが、これけっこうでかいことでは。今まで友達いねーぜ! からこういう風になるって凄いですよ実際。グレートですよ、こいつは……。これも徒然が影響した部分ですね。そしてそれゆえに春さんは魅力的になったんだ、と思うと、徒然の不思議な存在感というのを感じます。これで、徒然の家系の話はどうなっていくのか、というのが次の巻の、この漫画最大のポイントになりそうです。って、次で完結!? き、綺麗に終わってくれなさい!