感想 伊丹澄一 『共学高校のゲンジツ 1』

共学高校のゲンジツ 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

共学高校のゲンジツ 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

 大体の内容。「それが高校生のゲンジツ」。何も無いがある系、というのは最近のトレンドというか、所謂萌え物発送の展開ベースが他の漫画にも波及している昨今ですが、この漫画は更に一歩進んで、何も無いが無い、と言う言葉を捏造して二秒で廃棄するくらいに非常にどうにもならない、どうでもない、だからどうした、そんな雰囲気に満ちた、学生青春漫画となっております。青春に輝かしいものばかりがあるわけじゃない、それを皆忘れているんだッッッッ!! というのをふと思いついてしまう向きには、そうそう、こういうのでいいんだ、こういうので。という気持ちにさせてくれる。そんなひたすら何もないがあり過ぎる漫画、それが『共学高校のゲンジツ』なのです!
 そういう事を言った口でちょっとずれた事を言いますが、何も無いがある、でも、それでもその中に何かがあるかもしれない、という雰囲気はあるように感じます。基本的に男子三+女子二がメインの漫画ですが、その男面子にちょっとラブい気持ちを持っている人も居たり、男子1と女子1が変な付き合い方していて、なんかこれいつか進展するんじゃね? というアトモスフィアをかもし出していたりもします。その男子1は女子2とも変な出会いをしてあれ、これワンチャンあるんじゃね? とすら思ってみたり。女子2は色々と男子1に絡んでくるのが可愛いように見えないことも無いし、何か起こるかもしれない物がありますが、でも、このままワンチャン無いまま進んで卒業して何年かしてまた出会ってあの頃オレは、とかいう展開になりそうなアトモスフィアも当然のようにありますし、これで何かあったらそれはそれでこの漫画としては金返せ級なので、何も無いのままで進んで欲しいとは思って見たり。贅沢な客だな、わし。
 さておき。
 しかし、基本的に濃い甘さとか苦さはなく、しょうもないレベルの甘さ、苦さがたまにあって、この味わいが慣れてくると癖になるんですが、その特有の味わいが濃いのがヤスミジカン部分。何も無いがあり過ぎて状態異常になってる娘さんの、どうしようもないどうしようもなさが徒然と描かれる様は一周から二周回ってふつくしい…。と呟くレベル。このまま何も無いを続けて卒業して、ああ青春なんてクソだ! とか、とっとと終われあたしの青春!(『おひっこし』からの引用)みたいな展開になってもやっぱり何も無いのが続いて欲しいですね。ネタ切れがそんなに遠く無さそうなのも含めて、どこまでやれるか、と言う点でも見所があると思います。
 とかなんとか。