感想 小池定路 『父とヒゲゴリラと私』1巻

父とヒゲゴリラと私 1 (バンブーコミックス)

父とヒゲゴリラと私 1 (バンブーコミックス)

 大体の内容「三人の日々」。男やもめに女児一人。そんな三人の生活を比較的淡々とした色調で描いていく漫画、それが『父とヒゲゴリラと私』なのです! 派手さといえる部分がほぼなく、三人が過ごしていく時間が愛おしい、そんな雰囲気の漫画であります。とはいえ、4コマ漫画の基礎としてのコミカルな部分はありますし、それを出しつつ、たまにしんみりと、じんわりとくる場所もあり、起伏が薄いように見えて、それを感じ取れるとうねりを感じられる、そんな漫画でもあります。特に総一さんの亡き妻の事を思い出す時に、その傾向は顕著であります。総一さんが嫌いである雪の日の話はそれが良く表れていて、どうして嫌いなのか分かると、ああ、とか思いますが、でも、それを少しずつだけどそれが変わっていくんだ、というのをちゃんと提示しているので、単に、ああ、では済まない辺りが大変素晴らしいです。良いも悪いもかみ締めていくのだなあ、とか、思っちゃいますね。後、コメディタッチな部分でも、娘にだーれだ、されて色々な感情が無い混ぜになって泣いてしまうというのも、なんとも切ない物が隠れていたりして、うん、いいなあ、と。派手さを持たないけど、派手でなくても出来るんだ、という雰囲気、色調がいいなあ、と。
 さておき。
 雪の日の回は特にこの漫画の成分が良く分かるので上げ易いですが、他には総一さんが妻となるみゆきさんと子どもの頃に別れる話のある回と、大学生で再会する話のある回が好みだったり。みゆきさんはこの漫画で一番無駄にキャラっぽいというか、灰汁が強い人なんですが、その子供時代の別れを経て、再会して、明確に好きになっていく、と言う辺りがじっくり語られると、なんだか良い話であるなあ、というのが強く感じられます。でも、みゆきさんは前述通りかなり灰汁が強いので、端から見る分には楽しめるですが、実際に付き合うと色々大変だったんじゃあ、と思ってしまったり。たまに挿入されるみゆきさんの話がアグレッシブなので、やっぱり大変そうに感じます。でも、それでも総一さんとみゆきさん、二人が手を取り合って、結婚して、というのはやはりいい話であり、みゆきさんが故人になったのは、それがある分どんどん切なくなっていきます。でも、凄い人だったんだなあ、という感じもあり、悲壮感ばかりでもない、いい意味で淡々とした展開がそれを紛らわせています。これがガチガチだと、逆に引くので、この味付けは凄いなあ、とか思ったりも。
 さておき。
 この漫画、一体どこまで行くのだろうか、というのは気になる所。私、である所のみちるちゃんはまだ幼稚園。私、という一人称を使う時代じゃありません。そういう一人称が似合う時代まで、この漫画は続けていく意志があるという事なのか。その時はこの漫画の様相はどうなっているのか。そういう事を考えると、意外と色々な事が起きるのだろうか、という懸念とも期待ともとれないものが浮かんできます。そういうのが、この色調で見れれば良いなあ。
 とかなんとか。