感想 木々津克久 『名探偵マーニー』7巻

 大体の内容「なんかロハが多いけど、今回もマーニーにおまかせを」。今回もマーニーは色んな事件に巻き込まれます。前巻が殺人事件とか危険な事件に遭遇する事があったのに対して、今回は事件の関わり方も事件の種類も多種多様。元から一回一ネタなので多様だった訳ですが、今回の巻は本当の多岐とはこう使うものだ。フゥーハハハ! と木々津せんせが高笑いを上げているんじゃねえか、ってくらい導入、過程、結果が多岐にわたっております。この力を感じる為にこの漫画を読むのだ! という戯言がするっと出てくる力があるのが、『名探偵マーニー』7巻なのです。
 先述しておりますように、今回のマーニーの事件に対する行動は基本ロハという状況が多いです。義理があったり、偶発だったりが多いからですが、大体の場合割に合ってない感じなのが微笑ましい。実際問題として起きてる事件は微笑ましいなんてもんじゃないくらいシリアスなんですが、それでも奮闘するマーニーの姿はいいものです。人の心のグロさを描く場合の多い木々津せんせにしては、今回は人の心の素晴らしさがしっかり出ている回が多かったのも、そういう印象を感じる要因でしょうか。いや、グロさの中に素晴らしさを見せるという手管も使ってた*1ので、出来る人だとは思ってましたよ、ええ。でも、こうダイレクトに使ってくるというのは、やっぱり腕前の冴えが新たな段階に突入してきたと言えるのかもしれません。
 今回の良い回は三つほど。file55「ナゾの村」、file58「バスジャック」、そしてfile63「立花さんのバカ!」でしょうか。
 「ナゾの村」はサスペンス調。地図にも載っていない、電波妨害すらある謎の村にたどりついてしまい、そこから逃げよう、という内容で、人がいないけど使用されている感じはあったり、血痕が、というのでこの村はヤバイ! という雰囲気をしっかり出しつつ魅せつつ、オチへの持って行き方に驚愕する回でありました。ホント、えー!? と驚愕する事間違いなしです。それがいい意味なのか悪い意味なのかは個々人で確かめてみろ。
 「バスジャック」はメカニック回。その素顔が垣間見えるのが重要な点。思ったより、メカニックが若い感じだったので、二代目とかそういうのもあり得るのかしら。代替わりする意味合いが分からないから、ありえないかもだけど。そして、マーニーとメカニックは、やはり戦う事になる仲なんだなー、というのが理解出来たり。人を見捨てる事が出来ない、という美徳が、しかしメカニックとの戦いではどう転ぶのか。そこは決定的に違うんだよなあ。
 「立花さんのバカ!」は学園一の立花さんの周辺の恋仲になれるかも!? なブームに対してマーニーが対応していく回ですが、その過程でマーニーが立花さんに? というのがあってそういうの疎い感じのマーニーでさえ、って立花さんどんだけだよ、と思わされます。ブームの方も、ある理由によって鎮静化していきますが、その理由もなんとも納得できるものが。誰しも夢は追いかけ続けられない、という話という風に見ると、やっぱりぴりっとしてるなあ、木々津せんせは。とエリを正しますが、そんな話をしつつも、マーニーの恋めいた物を未然につぶしつつ、夢を諦めないゆりかちゃんのクオリティは素晴らしい。そりゃあとがきでもこんなキャラになるなんてって言われるわ。あなた、一応恋人いたでしょ。それはそれ、これはこれ、ってあなた……。
 そんな感じで、事件の深刻度合いとかの振れ幅が大きくなってきましたが、やはり知り合いが増えていく事で、関わる事件も広がってきているのが、この漫画を面白くしている所であります。色んな所に、事件の芽があり、問題があり、解決を待っている。それに接する事の出来る、寄り添える探偵としてのマーニー、というのも見えてきたような。これがメカニックとどういう対峙をしていくか、というのにも関わりそうだなあ。とかなんとか。

*1:その逆、素晴らしさの中にグロさを魅せるもやってたけど。