感想 高遠るい 『はぐれアイドル地獄変』1巻

 大体の内容「はぐれアイドル地獄変」。あまりに題名が内容を言い表わし過ぎているのでそのまま活用するのが正道と思います。そんな正道からはぐれたアイドルの地獄変。それが『はぐれアイドル地獄変』1巻なのです。
 とはいえ、正道をはぐれてAVに流れてしまいかけたのはこの漫画の主人公南風原海空のせいではありません。所属したプロダクションの意向のせいです。元よりAVに叩き売ろうという腹積もりで南風原さんを組み入れて、しかも家族のことを盾に取るという狡猾さでありまして、芸能界はひでーなー、とそこまでは、言うのもなんですがまあ普通によくある話なんですが、そこからがこの漫画の異彩を放ちすぎて何が何だかな所です。何が異彩かと言うと、南風原さんの特技、首里手、所謂琉球空手の冴えが極まっていることです。これにより、最初のAV仕事である百人組手をさせられることになりますが、それを力でクリア(半数程リタイアしたとはいえ)したので箔がついて、なんとか芸能界入りしていくという形になります。ハッキリ言いましょう! この漫画馬鹿漫画だと! でも、ガチといえる部分もあるにはあるので、単純に馬鹿漫画だとも言えないあわいもあります。でも基本的に馬鹿の側面が強いなあ、と。アリクイと戦え! とか、Gカップでスイカを割れ! とか、与えられるミッションが際物過ぎます。しかし、そういう南風原さんが一瞬だけど輝くまでの話です。というのはこの漫画の最後の著者あとがきでなされること。この際物大全開からどういう道で、一瞬であろうと輝けるのだろうか。そういう疑問が、いつかこの漫画を馬鹿話といった自分の愚かさを呪うことで覆されることを期待したい所です。相変わらず格闘要素が入ると活き活きし倒しているので、そっち方向もうちょっと強めとかなったらまた違った味わいの馬鹿さ加減になりそうですね。大体芸能界において南風原さんレベルの武ははっきり要らない訳ですし、それが活用されるというのは多分ろくでもないことの時に限られてくる訳で、つまり南風原さんの道行に武があるなら変なことにしかならないことは明白な訳ですよ。そういう過剰な力が芸能界でどう生きていくのか、という謎の見どころがありますのことよ。
 さておき。
 この漫画のおかしさ度数を一人で上げているのは、百人組手で出てきた豪島セーラさんでしょう。彼女のキャラクターが色々と凄まじ過ぎます。AVを高校生デビューしただけでも相当豪の者ですが、AVの三大NG*1を易々とやってのけ、しかもデビューの年でそれらを百本超やってのけたという豪の上にも豪の者。更に実生活では見た目地味な大学研究員をしていて、しかも奴隷とした人が何人もいて、南風原さんのこんな仕事! と言うのに自分の仕事の極太さを語って「働くってのはそーゆーコトだッ」って言い放つけど、それだけやるのあんただけです! な辺りとか、もう書けば書くほどこの人の人生のが興味深くねえか? という立ち上がりっぷり。でも、豪島さんだと芸能界という花舞台での煌めきというのはちょっと出せないだろうから、南風原さんの脇にある仄明るい道の提示としてだけ、いるんだろうなあ、とは思えます。いやでも、この漫画売れまくってスピンオフして豪島さんの人生見せてくれるのでも全く問題ないんですけど。インパクト強過ぎるキャラクターだからこそ、高遠るい漫画の中では鈍く煌めいていると思うんですよ。こういう無茶を通すのが、高遠るいまんがの良い所であります。逆に言うとキャラが濃くなり過ぎるという面もありますが、こういうインパクトで押していく漫画には重要な配役ではないかと思います。いや、本当に豪島さんのスピンオフみたいですよ。どうなっちゃうんだろう、そうすると。
 とかなんとか。

*1:SM、スカトロ、レズ