感想 王嶋環 『夢からさめても』3巻


王嶋環 夢からさめても(3)

 大体の内容「たとえ、夢からさめても」。予知夢から始まるミラクル。そんな『夢からさめても』も3巻で終了の運びとなりました。星さんと筒井さんの仲はどうなったのか。その辺が気になる方もおられましょうが、それについてはおいおい書くといたしまして、とりあえず、綺麗に終了まで事が運んだのが、この『夢からさめても』3巻なのです。
 正直申しまして、予知夢のことが出てくる、というのはテクニカルで大変だったろうなあ、でも後半息切れが見えたなあ。と外野的な発言をしてしまうくらいには、わりと喫緊のことを星さんが予知夢で見る場合が多かったかと思います。大仕掛けする暇もなかったのか、終盤は偶にしれっとあるくらいでありました。その上、筒井さんとの結婚生活を夢に見ない、という結構でかめのネタの方も3巻では特に言及がなく、ぶっちゃけポシャった形に見えるのが切ない所です。とはいえ、これ以上の大仕掛けをしても3巻で終わらねーから! 期日があるんだよ! という顔も見えて、それは致し方なかったか。と諦念を覚えたりします。話のゲインとしては最大にでかいネタだったので、それが無くなったのはやはり切ないものがあります。もうちょっと続いてたら開陳されるネタだったのかなあ。
 さておき。
 星さんと筒井さんは、この巻を持って恋仲から更に、と最終回まででされる訳ですが、そこに当て馬が出てきたり、星君が恋仲になれて調子に乗ったりなど、若干の波乱はありますが、上でも書いたようにある程度調和のとれる所で収まっていきます。あるいは、当て馬の人が結婚ネタと絡んでくるパターンとかも考えてたのかなあ。という感じですが、それはこっちの邪推ですね。すいません。
 それはそれとしまして続けますと、結婚という流れは特に描かれず、でも筒井さんが星さんとして星さんを、というのが最後にありまして、これでこの漫画は完結するのが正しかったんだ。という謎の満足を得るのでありました。大体の内容通り、たとえ夢からさめても、幸せなんだ、というので落ち着くことになります。この収まりが素晴らしく良くて、終盤のバタバタと案件を片付けていくターンが若干無駄に思えるくらいです。そこで通じあうから、というのはあるんですが、消化試合感がどうしても。とはいえ、先にも書いたように綺麗に収まって、読後感としては満足できたので、満足、したぜ……。って顔になりました。
 最後に総評めいた物を。といっても、予知夢のパターンを考えるの大変だったろうなあというのがどうしても前面に出てきます。大ネタをきっちりやったり、最終回でも小ネタ仕込んでたりと、大変だけどやるんだよ! というのが色々見えて、これでワンパターンではなかったけど、小幅な値動きだったな。とか言ったら罰が当たりますよね。最後のネタ、良かったですしね。ということで、予知夢ネタって大変なんだ、というのをしっかりと身を持って教えてくれた王嶋環先生に敬礼!