ネタバレ?感想 龍幸伸 『ダンダダン』1巻

ダンダダン 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
ダンダダン 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 大体の内容「盛れるもの全部盛り!」。漫画にも系統があり、要素を削いで研ぎ澄ますという系統のピーキーな漫画もありますが、逆に盛れるものは盛る! という形でピーキーにな系統になる漫画もあります。
 この『ダンダダン』も確実にその系統。ラブもバトルもオカルトもSFもアクションも青春も、入れれるものは入れるのだ! という考えでぶち込まれた要素が、喧嘩してるとこもあるけどそれでも大きな破綻無しで作品として確立している。
 それが『ダンダダン』という漫画なのです。
 この漫画の特徴としては、前記の通り要素の過剰さです。出来るネタがあれば全部ぶっこむ! という思想のもと、宇宙人だろうが都市伝説だろうが、憑依だろうが能力覚醒だろうが、とにかく混ぜていくという所作によってスゴイパワを持つ作品となっています。
 その結果、地縛霊とターボババアが組み合って凶キャラになっていたり、凡人だった主人公ズが超能力者になってしまったりなど、かなりアグレッシブな展開を魅せていきます。
 ああ、バトルヒロイン要素がしっかりあるのが大変嬉しいですね。結構ダメージ受けてますしね。やっぱりこういうのでいいんだ、こういうので。ってなるあかんたれが私となります。
 さておき。
 危機において力を発動する、という今ではネタにされ過ぎたせいですっかり廃れた感もあるイヤボーンな要素ですが、しかし、これがヒロインに超能力が植わる切っ掛け、という形だったので、その辺が時代を感じさせます。締めではなく、その後にバトルヒロインする為の始まりの為のイヤボーン! そういうのもあるのか。
 というか、この漫画ヒロインの方が色々強いって方向性なのが、出来ておる喃……。ってなります。そう言うのいいですよね……。強さと弱さのあるヒロイン……。
 という再び癖の話はさておき、この漫画の良さはぶち込み系としての立ち上がりもですが、バトルヒロインとなる桃さんと、憑依されし者オカルン(本名が桃さんの癖だったので、あだ名呼びに)の掛け合いが美味いところでしょう。特にオカルンの本名絡みのとこでさぱっと本名はなし! となる辺りが短いながら大変良い物があります。いい掛け合いはいい。トートロジーですが、そう感じました。
 それ以外でこの漫画の特徴を上げるなら、展開が早いことです。掛け合いがさぱっとしている部分もこれに拍車をかけるんですが、とにかくちょっとでも停滞しそうなら話を強引にでも駆動させる、という意志がそこにあります。
 勝手に思ったのは映画『アクアマン』のような駆動させ方だな、です。
 『アクアマン』は話の折に触れて爆発する、とまで言われた生粋のボンクラ映画です。本当に言われるように爆発させてたので初見ではビビりましたが、さておき、あれも展開が停滞しそうになったところへのカンフル剤として爆発させるという行為があったという見方も出来ます。
 ダレ場を作らない、あるいは出来たら爆発させる。それによってどんどんと話が展開しなくてはならないというベクトルを得る、という形ですが、『ダンダダン』も全体的にダレ場が出来たら即話を展開する、という所作でやっています。
 特に桃さん家に帰ってからの流れが非常にバタバタとしていますが、それもダレ場になりそうなとこからガッガッと進める為の所作です。ダレてる場合じゃねえ! と言わんばかりです。
 それが出来るのは、上記のように、まず色々な要素を全部盛るからこそ尺が足りなくなりそうなことと、それと会話のやり取りが短く印象的なことが、影響しているされていると考えます。
 とにかく要素が押しているから、ゴリゴリ高速展開しないと間に合わないし、だから話も自然と短くても印象的にするようになる、という形です。
 そういう要請からくる、話の展開を素早くする所作。だから、色々詰め込まれていることに軽く順応できるし、ダレ場も少ないから楽しい。詰め込み方も結構テクニカルというか、さらっとやってるけどかなりの難度のことをやっているという印象も持ちます。
 特にターボババアが地縛霊と合わさって凶キャラになる、とかオカルトネタとしては無茶苦茶なんですが、あまりに高速で展開されるので、そういうこともあるのか。と井の頭五郎台詞で納得させられてしまいます。それまでの、オカルンに憑依したターボババアの兇状からすると、それくらいなってないとおかしいわな。まであるので、わりと無理なく理解させられるのです。
 この辺の所作はマジ卓抜! 漫画強者! まであります。あるいは漫画の強度というのを感じずにはいられません。
 そしてここまでの要素コングロマリットを、破綻しそうなギリギリでつなぎつつ、一つ話として立ち上げているのは、マジ頭が下がり過ぎてかつらが脱げる、つまり脱毛します。こういう連載もあるジャンプ+、すげえな。『ゲーミングお嬢様』みたいな頭おかしい企画ばかりではないんだな。そういう感嘆もしてしまいます。というかゲー嬢のせいでピーキーなのがいる場所なんだって思ってましたよ。いや、『ダンダダン』もある種ピーキーですが。
 ということで、少年漫画要素てんこ盛り。しかし土台が思いの外しっかりしている。それが『ダンダダン』の良さなのだと思います。