感想 双見酔 『空の下屋根の中 1』

空の下屋根の中 (1) (まんがタイムKRコミックス)

空の下屋根の中 (1) (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容。「少女ニート中……。しかし!」 と、テンション上げるようなことではありません。
 見所。ニート状態のリアルリアリティ。ホント、リアルリアリティが半端ないんですよ。なにせ漫画内でハロワ行くまでが、体感的にやたら長い。それまで家でぐだぐだらー、という状態で一応進む、んですけれもど、それがまた妙に長く感じられます。実際、本の半分くらいがそんなぐだぐだらー、なのもありますが、それ以上に、たぶんですが、その調子に身に覚えがありすぎるせいで長く、辛い時間に感じてしまうのではなかろうか、と思うのです。所謂一つの、お前は俺か、という感覚。気がついたら昼というか夕方近くまで寝てて愕然とか、就職活動みたいなのを一々留保するとか、ハロワの受付にたじろぐとか、どこの俺ですか。俺なのですか。ということで一部の人には体感度のやけに高い漫画となっており、そういうのをした事のある人には一々うなずけるけれど、そうでないと「なんなのこの子? バカなの?」みたいな目線を持ってしまう、そんな漫画。見てて痛いんだけど、でも見てしまう、というアンビバレントな持ち味はあるにせよ、やっぱり主人公嬢の行動は見てて不快感を持つ向きもあるよなあ、とは思います。
 これきらら系に載ってるんですよね? という位に女の子主人公以外できららと接点なさそうな漫画なんですが、きらら系での異端な漫画って貴重だし、あってもいいのかもなあ、と大人対応。でも、後半はきらら漫画っぽい雰囲気になってきて、これはこれで個性がなくなったのでは? とちょっと勿体無く思ってしまいます。でも、これであれがああなったら、きらら系以外を含めてものかなりの鬱漫画になるのかも……。とこそあど言葉でぼかしつつ、勝手な先見の明で戦慄してみるのであります。そうなったら面白いのにー。そして鬱いのにー。その方がこの漫画のポテンシャルをいかせるに違いないのにー。上から目線ですが。
 さておき。しっかし、この描き下ろし漫画の誰得感はなんなの? 連載分より明らかにダメ漫画ですよ。ダメ人間漫画ですよ。それをわざわざ描き下ろすってなんなの? というくらいに嫌な思いをする描き下ろしは、本編以上に異端になっており、この漫画がどういう漫画で、どういう振れ幅があるのか、というのを表している、と見ることもできるけれど、やっぱり誰得、なのでありました。この調子が連載分に無くてよかったー。