感想 中村光 『聖☆おにいさん』9巻

聖☆おにいさん(9) (モーニング KC)

聖☆おにいさん(9) (モーニング KC)

 大体の内容「立川がその内聖地となるんじゃねえかってくらいの、聖人私生活」。前回の沖縄バカンスが終わった後は、いつものようにただの毎日が繰り返されます。でもそこは聖人なので、いつものように聖人ネタギャグが色濃く展開されますが、そこにいつもの生活に新たな彩りとして色んな行事やイベントが重なり、まだこの漫画の臨界点、ネタの枯渇点は遠いんだなあ、と理解させられるものがあります。イエスブッダ、どちらの流派(流派?)も伊達に世界宗教ではないな、と言うくらいに色んなネタ行動、ネタ解釈が詰め込まれており、神童じゃなく、神の子なんで! とかで無駄に爆笑させらるように、それがまだまだ我々を楽しませてくれる。それが『聖☆おにいさん』なのです。
 この辺のネタの横溢度は、それはすぐさま登場聖人あるいは悪魔がたくさんになってきた事にも由来します。幼稚園の劇の回の人数あわせのペトロ、アンドレですら十分色濃いのに、困ったちゃんユダが更に彩りつつ、でも基本的にこの漫画はブッダとイエスがメインだから、という部分もしっかりありのいいキャラ回でした。もうちょっと桃太郎の内容をしっかり知ってからやった方が良かったですよね、イエス達。全然関係ない話になってるし。あれはあれで非常に大事故感が素晴らしい物でもありましたし、子供達は今一分かってない上にブッダ螺髪をきびだんごじゃね? あげればいいんじゃん? するしでもう無茶苦茶でしたが味わい深いではあります。
 さておき。
 キャラクター回というと、今までほとんどメインでは出てこず、たまにネタとして消費されるばかりであったマーラが今回表舞台に。ブッダを誘惑した悪魔だというのに、今までの『聖☆おにいさん』では可哀想な人という扱いで、今回の登場でも可哀想感全開でした。友達いないっぷりがスマホのマイク機能やらメーラーデーモンやらを人だと思い込んでる様として出てしまって、その、何この可哀想な悪魔……。結局新たに可哀想属性を追加されるだけの登場なマーラでありました。
 好きな回の話をすると、上でも書いたように劇回とマーラ回は好きですが、一般の人と聖人とでは事の認識が全然違うというのが良く出ている合格発表回もいいですね。落ちた生徒に向かって、1000日間で山の中4万キロ走って手に入る大阿闍梨を薦める辺りが悟りの難しさと世俗との乖離を如実に表していて良かったです。ちょっとした実技じゃねえ! そりゃ浪人生が皆、次は受かったってんだからそんなのしたくはないわな。こういう部分のズレギャグが真骨頂ですよね。
 にしても、立川に聖人と関係者がやって来過ぎてる節があり、このままだと新たな聖地として立川が認定されるという何かがおかしい展開すらありえるのでは。とも。というか映画あったからそういう意味での聖地化もしてるんだよなあ。それが、更に漫画の中だけでも真正の聖地になったら、世の中面白い過ぎるんですが。いや、流石に無いか。