感想 せがわまさき 『十 -忍法魔界転生-』3巻

十 ~忍法魔界転生~(3) (ヤンマガKCスペシャル)

　大体の内容「柳生十兵衛登場！」。敵側の編成もとうとう終わり、紀州徳川家、徳川頼宣にそのお披露目も終了。そして登場する柳生十兵衛！　という事で助走段階もそろそろ終了か？　と思ったらまだまだ助走という内容なのが、『十　-忍法魔界転生-』3巻なのです。
　やっとこ、出る出ると煽られていた柳生十兵衛が登場して、話は進む様相を見せ始めますが、先にも書いたようにやはりまだ助走段階。十兵衛が出張ってくる理由までがもうちょっと掛かるかな？　という状況であります。とはいえ、やはり毎度思うが大変面白い。十兵衛が出てきたという事で、それが敵の転生した剣豪達とどう戦うのか、というのが既に念頭なんですが、それも単に戦うだけの展開にならなそうなのが、今回における十兵衛が挑む理由付け部分の出し方で見えてきたり。それは、柳生家ゆかりの女子三人が紀州徳川家に輿入れ、という普通に考えるといい話なんですが、そこはもう既に読者側としては紀州徳川家が危険だ！　と知った後なのでこれはまずいのでは？　と思っていたら、実際に女子の祖父達がその危険な所を目撃するのと同時に我々も目撃する訳ですよ。そうなると、単純に剣豪と戦って倒す！という展開だけではなく、奪い返すという方向性も視野に入ってくる訳で、そうなると色んな情勢が生まれるだろうなあ、と思って既にむんふむんふですよ。前提条件流れてるだけなのに楽しい！　って凄い事ですよ。これで剣豪の話をがつがつ流れてた時期だったらもっと凄い気分にさせられたんだろうなあ。そこの、時代の空気はちょっと今には醸成出来ないので当時世代、『おぼろ忍法帖』時代への羨ましさは鰻上りですが、それでも今この面白さを全く予備知識無しで、この漫画として見れるというのもまた今の時代しか出来ない事なので、当時世代に対してざまあみそしる！　と言って溜飲を下げたいと思いいます。
　というどうでもいい事はさておき、上記通り、今回の巻でも十兵衛と転生衆との戦いはなく、というかほぼ剣戟場面もなく、というので前提条件長すぎる！　とも当然思えるんですが、上記通りこれからの妄想でむんふむんふ出来るのと、節々で立ち回り場面はあるのもあって、案外楽しめております。特に紀州に嫁がされた女子三人の試し場面での三者三様の動きは大変な見所。飛ぶ、いなす、斬る、とどれもこれも素晴らしく見栄えのする動きで、これが漫画化の強みであるなあ、と思うと同時に、これで十兵衛が戦いだしたらどうなるんだろうと、やはりむんふむんふ事案であります。そりゃ、天草四郎時貞も柳生同士で戦いあったのみたいとか言うわ。というかそっちで言っちゃうのかよ、こっちの想いを！　って事はその流れも尋常ならざるものになるんですね、山風先生及びせがわ先生！　と期待値が大変上昇してきます。
　さておき。
　にしても、この巻での雨に打たれて濡れ鼠の女子三人の色気がとてつもないもので、大金時殿がふっくらしましたよ、と婉曲なのか直裁なのか分からない事を言ってみたり。せがわ先生の女体の艶っぽさは漫画家となった当初から私の下半身に直接響いていましたが、漫画家として円熟を迎えるに連れて、単に露出している色気から着衣の上からとかちょっと見える所とか透けている所とか、滲み出るものが生まれており、それが大変好みに合って溜まりません。逆にすぐ裸になられると、もっとこう、とか思ってしまいますがこれはちょっと慣れ過ぎてしまってますね。今後も、滲み出るいやらしさに磨きを掛けてもらいたいものです。
　とかなんとか。