感想 山東ユカ 『スパロウズホテル』4巻

 大体の内容「今日も、皆、平常運転!」。全体的に平常運転では困るタイプの人が多い気もしますし、新たな登場人物も平常運転だとどうなのかなー、なので平常運転と書いて不安が出る所もあるという不思議な漫画。それが『スパロウズホテル』なのです。
 基本中の基本として、この漫画はお仕事漫画に類する物でありますが、妙にお仕事感を持たないのはたぶん人知の及ばないレベルで無茶な人がいるからでしょうか。それは当然佐藤さん、と見せかけて塩川兄の事です。長身巨乳の超腕っ節強い佐藤さんの存在も相当のファンタジーというか無茶なんですが、塩川兄の無茶さはお仕事物としてはこれまた破格の超人材なんですよ。この人がいないと本社の営業が回らない、というある意味テンプレなんですが、そのテンプレがあってもそうは言ってもなんとかなってるんでは? と普通は思えるし想像出来るんですが、この漫画だと実際に営業が回ってない描写、そして本当に頼りしにしている描写が入る為、大の大人の社会人がそんな一人に任せっきりでどうするんだよ! という以上に、ここまで回らなくなる程依存されて且つそれに応えている塩川兄マジどんだけなんだよ! と思わされざるを得ません。その人がいなくてもちゃんと仕事出来ないといけないのでは、とも思うんですが、それを問答無用で仕事出来るという立場を与えられてる塩川兄パない。背表紙の感じだと単なるイケメンで仕事も出来るのね! 嫌いじゃないわ! なんですけど、それでいて基本的に強度のシスコンな為、このある意味での駄目人間が仕事は超絶有能……。というなんともいえない溜息が出てきます。実際に周りの人及び塩川主任は堪ったものではないけど排除も出来ないのも、その有能さゆえである辺り、本当にどうしたらいいんだこの人。って感じです。
 その影に隠れる場合もありますが、佐藤さんも先にも書いたように相当であります。基本的に礼儀正しく優しくしっかりしているのにその来歴の不明さとパワー系スキルの高まり具合で一気にネタキャラとして立ち上がってくるんですヨネ、佐藤さん。本当にどういう仕事を今までしてきたのか、あるいは何故それを捨ててホテルのフロント係に、というのがホントもう。それでいてやっぱりいい人なのが困ります。ちゃんと止めれば止まるし、気配りもしっかり出来るし。色々ずれはありますけどもすれがなくて本当に純朴な性格なんですよ、佐藤さん。それが来歴の不明さを更に深いものにしていて、ホントホントもう。
 そういう訳で、この漫画は佐藤さんと塩川兄という超人ツートップで回ってると言っても過言ではないというか事実ですけれども、どうにも行動が恐ろしいレベルで止まらないの塩川兄に対して、佐藤さんの行動はストッパーがちゃんとあるのでやはり安心して見れます。基本的に止められたら止まる人だから助かる訳ですが、そのストッパーたる塩川主任がいない回は流石に冷や冷やしました。流石に誰かやっちゃうのか!? って感じで。その回は同時に塩川兄も塩川主任が絡むがゆえに躍動する回だったので、終始冷や冷やという恐ろしい回でありましたよ。この漫画の最大の要はやっぱり塩川主任なんだな、という理解が深まるばかりです。
 個人的に好きな回は女子会回。御園君は常々不憫ですが、この回は最悪の結果は避けられてたのが印象に残っていたり。いる段階でも相当不憫度がありましたけども、最後までいたらどうなっていたのか。べろんべろんの女性陣+うわばみの佐藤さんという未知の領域に達さなかったのは、山東ユカせんせの最後の親心だったのでしょうか。訳が分からないですが、そんな気持ちになったんですよ。
 とかなんとか。