感想 内藤泰弘 『血界戦線』10巻

 大体の内容「レオ、最大の戦い!」。
 アニメも無事放映され、某ニンジャみたいな奇妙なアトモスフィアが無い、真っ当なアニメとしてちゃんと放映されているという事実を噛みしめる昨今、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回の『血界戦線』10巻は、一つの話で完結しており、内藤せんせのド派手な演出という部分は抑えられ、故に細かい所やじっくりとした展開で魅せる、漫画家内藤泰弘の一里塚とも言える巻となりました。派手さが無いのは、それもそのはずレオが他の人には知覚すら不可能な相手と戦う話なのです。派手になりようがありません。でも、それ故に出来る事があるだろ、というのを突き詰めた格好なのが、この巻の独特の味わいとなって現れます。そこで重要になるのは絆、それも兄レオナルドと妹ミシェーラの絆の話です。自身の目と引き換えに、レオのを神々の義眼に、というミシェーラさんの行為に、まだ引き摺りがあったレオですが、それ故に、もうこれ以上は、という想いでミシェーラさんの危機を自分の危機に替え、そして相手の侮りや油断を使って連絡を取ったり、あるいは観察で得た知識を使って体重差があるのと知って、でも最終的には泥臭く殴り合いめいた形へと向かっていきます。いや、一方的な試合から、泥仕合に持っていったのです。それはどれほどの事か。
 この戦いの前に、どう戦うかというのを色々な人に聞いている場面から、その助言を効果的に使っているが故に、ほぼ凡俗のレオが戦いになる。というのがいいのです。ただ無策で戦う訳でもなく、仲間も来る。というのも素晴らしい。使える物を全部使った、それ故に出来た戦いで、そして掴み取った勝利。基本的に凡俗のいないこの漫画唯一の凡俗の、平凡ならざる勝利。だからこそ、レオは格好いい。余計な修飾をつける必要が無いくらい、格好いいのであります。
 それにしてもミシェーラさんとレオのお互いを思う心、というのもいいものでした。お互いの為に危険を冒す事を厭わない、その胆力は凄まじいものがあります。それも、ミシェーラさんのレオへの信頼と、それに応えるレオというのがまた。亀の騎士、というのが侮りではなく、後退せず戦ってくれる、という信頼の証故のネーミング、というのが最後に提示されて、ああそうだったなあ、と思わせられます。レオは凡俗だけど、引かない時は引かないもんなあ。
 にしても、最後の大きなインパクトはやっぱりクラウスさんが持ってくのなー。この巻で一番くあー! ってくる爽快感は二カ所、血族との戦闘場面とDr.ガミモツがぶち殴られる場面で、どっちもクラウスさんなんですよね。流石にいいとこ取っていくわー。その後の、入院したレオを見舞うでの言葉の重みもね。いいとこ取っていく事にかけてはこの作随一だよなあ、クラウスさん。
 とかなんとか。綺麗に終わったように見えるけどしれっと続いてくれるはずだから期待します。これで終わりなんて言わないで!