感想 施川ユウキ 『バーナード嬢曰く。』2巻

 大体の内容「二匹目のド嬢」。名著礼讃ギャグ! という謎単語でくくられる、読書家の為じゃないような読書家の為じゃないような漫画。それが『バーナード嬢曰く』なのです。
 1巻(感想)でも既に読書家というより見栄え系読書家として励起しまくりだったバーナード嬢こと町田さわ子さん。今回は結構読んでいるような、でも読んでいないような、というか楽して読めるならなんでもいい! というまかり間違ったハングリー精神と、見栄えが出来るなら神林さんに殴られようと貫き通す意志力が合わさってほとんど無敵の様を見せています。本当に、見栄え読書を貫き通す意志力は絶大で、折れると言うことを知らないのはある種尊敬の念すら覚えてしまうのは、ハッキリ言って無理からぬと思っていただきたい。それくらい初志貫徹しているのです。一応ちょっとは読みだしているので、1巻みたいな「読めよ!」というのはまだ往々にしてあるにしても減少傾向なんですよね。そこは評価したい*1。でも、楽出来るなら楽をする! というのもある意味では読書家の柔らかい所、そして痛い所を突いているのですよ。出来れば楽に済ませたいというのは、誰も言わないけど、でもある心情であるのではないか。そういう所を的確に突きつつ、しかしギャグとして落として、大体神林さんがつっこんで、そうそう、駄目だよな。とするのが巧みであります。いわばタツジン! 寄らば…シュナイデン! という訳ですよ。
 さておき。
 今回の特徴は、この漫画の生命線であるつっこみ役の神林さんが案外つっこみしてないと言うことです。案外町田さんの言動で揺れたりする所です。そしてなんか可愛い所です。アイエッ!? となるくらい可愛いのです。
 つっこみを入れる所では、入れるには入れてる場合もあるんですが、例えば町田さんに黒の装丁だとかっこいいと思うんだ。って言われて衝撃を受けてかなりダメージを受けていたり、町田さんが素直に好きな本のいい所を解説しているのを、いいものだなあ。って涙ぐんでしまったりしております。お前がしっかりしてくれないと、俺孤立無援じゃねえか! とギャグマンガ日和台詞がすらっと出てくる異常事態。本当に必要な所では抜かさないんですけど、偶にこういうのがポツポツあって、この漫画の様相も変わってきたなあ。と思っていたら、神林さんが可愛い場面が都度都度挿入されるんですよ。先の町田さんが好きなものを解説してるのにいいものだなあ、もそうですし、往復書簡を、と言いだした町田さんに手紙を書くくだりの、書いている内容の素朴ながら後で読んだら絶対赤面物な辺りとか、冬休みの旅行でメールでやりとりするとこの笑顔だとか、貸した本が酷い有様になって、しかも読みながら寝ている町田さんが「この本面白い」って寝言を言ってるのを聞いて、もう一冊買うか、って決断したりして、もうなんだよ神林さん可愛いにもほどがあるだろ! ということになっております。……なんだよこれ! どこだよここ!
 それに付随して。
 この漫画ではあんまり同じ本を取り上げないのがベーシックになっている所があるんですが、この巻内で2回も登場する本があります。それが齋藤智裕(=水嶋ヒロ)『KAGEROU』。二度なのも特筆ですが、結構合間無くやっているのも特筆点です。しかも、ちょっとした小ネタではなく、がっつり読んで感じて思った事を描き連ねておられます。自分も自己流ながら文章書いているので、この巻で描かれた、傑作書いた! と思った一晩後になんだよこれ! どこだよここ! ってなるのを繰り返して作られたアトモスフィアがある、というのを見て、無性に読みたくなったりしました。そこはそれで納得いくものなんですが、その後のそういう懊悩があったなら、「(純文学として)なぜそれを書かない!? 水嶋ヒロ!!」のくだりでは爆笑せざるを得ません。それ、施川先生じゃねえ神林さんのゲスの勘ぐりだから! 事実無根! でも、確かにそれは書いてみるべきだよな! というのがないまぜになって腹が痛かったです。こりゃ、『KAGEROU』読まんといかんな。
 とかなんとか。

*1:謎目線