感想 北欧ゆう 『高橋さんが聞いている。』1巻

 大体の内容「盗み聞き。なんと聞こえのよい言葉か―――」。売り出し中の高校生アイドル、高橋エナさんには秘密があった。それは、同じクラスの地味目の二人、奈良君と御影君の会話の盗み聞き! という事で、奈良君と御影君の、人には知られていないぶっとんだ会話に、エナさんはもうメロメロ! なので盗み聞きなんてしてると知られる、バレるというリスクすら呑み込んで、今日も二人の会話を盗み聞きする。『高橋さんが聞いている。』とはそういう漫画なのです。
 男子の会話を盗み聞きする、というのを近くのボケをJKが拾うという言い方に変えると、ふっと記憶に湧きたつものがありました。そうです*1。『となりの関くん』です。同じタイプのスタンド、あるいはフォロワーという言葉が、つまり出てくる訳ですが、それでも単なるフォロワーで終わっていないのは、盗み聞きがエナさんのアイドル活動に影響を与えている事と、盗み聞きする為にエナさんがどんどんエクストリーム化し始める、行為がエスカレートする事があるからです。
 『となりの関くん』は横井さんという名バイブレイヤーが関くんという主役の行動に見事な解釈、見事なつっこみ、見事なけん制、見事な阻止を繰り広げる漫画でありまして、そこで横井さんは特に何か得られるという事はほぼありません。あくまで関くんとの関係性は傍観者であり、そして見て解釈するだけであります。それに対して、『高橋さんが聞いている。』のエナさんは、その盗み聞きというちょっと後ろ暗い趣味が、アイドル活動に良い意味でも悪い意味でも影響を与えています。たとえば、ボケのリズムに癒されて菩薩の境地を得たり、つっこみしてたらヘアセットが身に付いたりなどします。この、直接的に影響がある、という部分がまず、『となりの関くん』と違う所。あるいは、それが『となりの関くん』の特異性とも言えますが、この話はまとまってないので来月に出る『となりの関くん』5巻読んでからにします。
 さておき。
 もう一つ、『となりの関くん』と違う所は、関くんの行動に対して横井さんが傍観の域から出ないのに対し、エナさんはかなり盗み聞きの為に積極的な行動をします。聞こうとしたら美術室でパントマイムめいた事しなければ、辺りはまだ傍観の延長線上として、ぎりぎり無理があるものの、見えなくもないのですが、奈良君と御影君がプールで話を、というのに対して行った事は傍観の域をはるかに超えていました。プール内(水中)に自分の隠れられるスペースを作って、ってどうやったんだよ!? というつっこみが発生してしまう所ですが、それ以上にここまでして盗み聞きしたい、というのがこの漫画の特異性として立ち上がっているのもまた事実。ここもまた、『となりの関くん』とは違う所ですね。
 にしても、奈良君と御影君の会話はボケしか登場しておらず、つっこみが全くのless。この二人はこの会話しててはたして楽しいのだろうか、という疑問も湧く位だから相当です。そういうボケオンリーの会話に、エナさんのつっこみが冴えわたる。それでリズムが生まれている漫画なのですが、でもやっぱりあの二人の会話はどうなっているのか。あれでコミュニケーション取れているのか。とか考えたりするのでありました。しかし、プール級のエクストリーム見せられたら、次はどうなってしまうのか。天井とかありそうだけど、もう盗み聞きってレベルじゃないよな。そして、このままだとエナさんはどういうアイドルになるのか、というのも気になる所。現在の事務所の推し方が微妙におかしいというのがあって、ついでに盗み聞きすると色々と能力がつく事もあって、このままだととんでもない逸材になるかとんでもない汚れになるかの二極しかないんですが、ホントどうなるんだろそこ。
 とかなんとか。

*1:何がそうですだ