感想 森繁拓真 『となりの関くん』5巻

 大体の内容「相変わらずどこでも遊ぶよ!」。今回はいつも通りの関くんの遊びの時間以外にも、一大イベントな修学旅行から、これもある意味一大イベントの授業参観も込み込みのバラエティに富んだ巻となっておるのが、『となりの関くん』5巻です。
 修学旅行回は都合二回で終わり、しかも内一回はバスの中というよくよく考えなくてもバランスが変なんですが、それは通常の漫画の場合であり、この漫画は『となりの関くん』なのであり、つまりそのバランスでも全然問題ありません! なのがとんでもない話です。それで納得できるんですから、ホント変な漫画であります。
 内容の方はバス回がてるてる坊主、旅のメイン部分はロボ親子フューチャー、というこれまた絶妙に地味めいた内容ですが、どちらもいつもの遊びの延長線上としてしっかりと地盤を築いている上でやっているので、目新しさよりここでもやるか! という方に目が行きます。そしてどれも関くんの行動は単純じゃないし、横井さんの行動も単なる傍観ではないのも、注目点です。特にロボ家族の方はやたら気持ちが入ってベストショットを撮る! という意気込みな横井さんの行動は特筆に値します。ロボ家族の事になると目の色が変わりますよね、横井さん。あれなんなんだろう。母性?
 もう一つのイベント、授業参観はなんとなんとの関くんのお母さん登場。関くんの行動をどう思っているのか、というと横井さんと共同戦線を張ったという言葉でお分かりいただけるかと思います。とはいえ、そんなお母さんと横井さんの共同戦線の前でもやはり遊びはする、という関くんの一貫性は素晴らしい。やりたい事はやりたい! 俺の遊びは曲げない! という事ですね、分かります。ここで折れない強い心は、関くんの行く末に意味を持ってきそうですね。はい、行く末にって言いたいだけです。
 さておき。
 いつものな回での関くんの遊びも当然いつも通り絶妙のスケール。ダメージジーンズに挑戦したり、ロボット行程の真似をしてみたり、なんでも鑑定団しだしたりと、それがバレないのが不思議なレベルのをやっておりましたが、今回で最大なのはやはり地下鉄。電車のおもちゃとプラレールめいた物を取り出したので、横井さんがここで組み上げるのか、と思ったら机の中で完成をみる事に。それ机どうなってるんですかねー! と思ったらのぞき窓で見る関くんは楽しそうでした。その手があったか! しかしそれが見れないのはめちゃ許せんよなー! という事でどうにか見ようとする横井さんの姿はお笑いだったぜ。
 この辺とか、上の修学旅行回の行動とか、横井さんが単なる傍観者から積極的に覗こうとする方向になっているのは、この漫画の変転としては注記したい所です。基本的に傍観しつつ、時にいさめ、時にともに感じ、時につっこみ、だったのが、ついに時にのめり込むようになってきているというのは、この漫画の重要な部分であるような気がします。同じ傍観者物*1である北欧ゆう『高橋さんが聞いている』(感想)の高橋さんが男子二人組の会話ボケに積極的且つ癒しという目的などを持って傍聴するのに対して、横井さんは関くんの遊びが視界に入り、そしてその出来栄えに感嘆せざるを得ない、解釈せざるを得ない、というスタンスで、つまり受動的なのは対照的ですし、そして高橋さんが得る物があるのに対して、横井さんはむしろ失う場合、ちゃんと勉強してないのをとがめられる場合が、先に書いた授業参観回のようにあるのも対照的です。この辺がこの二つの漫画を明確に分ける線として立ち上がっています。しかし」何故、得る物が無いのに、横井さんは見入ってしまうのか、という問い方をすれば答えは簡単です。それだけ、関くんの遊びが面白いという事です。この、如何に出来そうで出来なさそうで、そして面白い遊びというのを考えるだけでとどまらず、更にそれを面白いんだ、という視点と解説としての横井さんがあるのだ、という事でしょうか。そういうのではなく、単にツッコミ役なのが高橋さん、という事も出来るのかもしれません。この辺のあわいの差が、横井さんと高橋さんの存在感の違いなのかなー、とかなんとかまとまらないまま締めます。

*1:何それ。