感想 北欧ゆう 『高橋さんが聞いている。』2巻

 大体の内容「聞く! 聞く! 聞く! 高橋さん盗み聞く!」。高橋エナさんは売り出し中のJKアイドル。徐々に学校でも人気の影響が出てきた彼女には、ある秘密がありました。それは、彼女のクラスの男子二人の、そのシュールと言うか会話のデッドボールを盗み聞くのが趣味があったという事なのです! という一巻から一貫した基本を今回も続けつつ、ちょっと違う手管にも出るのが、『高橋さんが聞いている。』2巻なのです。
 基本的にこの漫画の指向性は一定です。奈良御影コンビの、そのシュールと言うか基本ボケしかないのに成立している感のある会話を、高橋さんが盗み聞いてツッコミを入れる。これがこの漫画の基本であり基礎であり基底です。ほとんどの回でそこからの逸脱はありません。その盗み聞きという事実に高橋さんがスリルを味わいながら、しかしばれると問題になるのであくまで密やかに、行為に及ぶのがこの漫画です。ツッコミも大っぴらにいれたいけど出来ない! という抑制がこの漫画のコクとして立ち上がっている訳です。そこを愛=理解! しておくと楽しみやすいかと思います。
 さておき。
 1巻(感想)で構築されたこのお約束ですが、この巻でも先に書いたようにほぼ逸脱はありません。奈良御影コンビの会話を聞いて、突っ込んで、そして何かしらの効能を得る、という形は忽せにはされません。テスト前の勉強会でも聞こえてきてやはり人知れずツッコミ入れたり、校長の挨拶の時でも聞こえてきてちょっと逸脱があったり、席替えでベストポジション! して早々の会話でエア楽器したりする。のですが、そうなるとやはり1巻プール回みたいなエクストリームなのが気になる所です。まあ、さっくり言いますが今回はプール回ほどの事は無いですが、それでも意図せずエクストリームしてました。それが第21話「新春初夢フェア」。その前の二回で一騒動あった影響で、高橋さんは金網フェンスをよじ登って奈良御影コンビの会話を盗み聞きします。フェンスと言っても普通の物ではなく、野球関係の奴なのでやたら高い(大体建物で言うと二〜三階レベル)とこによじ登ってのエクストリームな盗み聞きでした。その後はまあ降りるんですが、これもエクストリーム。1巻でも凄いジャンプをしてた高橋さんですが、これを見ると身体能力とてつもないのでは? と思わされます。アイドル以外の方が向いてるんじゃねえだろうか、とすら。まあ、盗み聞きの影響か何かでしょうが。
 さておき。
 今回は基本テーゼはいつも通りなのが多かったものの、逸脱した回もきっちりあったりします。先に一騒動あった、と書きましたが、それが同時にこの漫画の逸脱回なのであります。それが第16話「波形に踊る言葉」と第20話「高橋さんが見られてる。」です。
 第16話「波形に踊る言葉」はほぼ初めての奈良御影の会話を盗み聞かない回。ついでにプレイボーイのラジオパーソナリティ北神さん初登場回でもあります。ここでは送られてきた手紙の内容に突っ込むのに一生懸命になって北神さんの落としテクが全く通用しない、という笑い所として立ち上がっていますが、それ以上に北神さんが高橋さんの全くなびかないっぷりと最終的にツッコミの蹴りを食らってMとして立ち上がってくるとこも見所です。なんなのこの人……。
 と思ったら、第20話「高橋さんが見られてる。」で北神さんが再登場。それも学校に潜り込み、高橋さんが絶賛盗み聞き状態なのを偶然ながら見る事になります。その前の第19話の時間軸の別視点としてもある回で、第19話で生まれた謎が回答される回でもありましたが、それ以上に北神さんのM気質がヤバイ感じになっているのが特筆点。どうしてこんなキャラクターになってしまったんだ! 最初全く魅力ねえな、とか思ったら別の意味の魅力がガンガンに屹立してしまっており、それがメインを食いかねないという域に達しておられました。今後の出番もこのテクニカルな回みたくなるんでしょうか。大変そうだなあ。
 そんな訳で、基本は忽せではないにしても、ちょっとテクをかましてみるのも見せてくれているので、案外会話ネタが先に尽きそうなアトモスフィアがあるにしても楽しませてくれる漫画になっているかと思いました。いや、でもやっぱネタ切れ怖いなー。大丈夫かなあ。
 とかなんとか。