感想 瀬戸口みづき 『めんつゆひとり飯』2巻

めんつゆひとり飯 2 (バンブー・コミックス)
めんつゆひとり飯 (2) (バンブーコミックス)
画像が紙、文章がkindle版のリンク。

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 大体の内容「めんつゆで時短!というより手抜き!」。しかし、面堂さんのそれをずぼらと言い切れるのだろうか。彼女はしっかり仕事をして、残業もして、でも帰ったらご飯は出来ていない。その中で適当に手抜きしてご飯を作る。これはむしろ凄いことなのではないか? という面堂さんの言い訳を一身に浴びてみるテスト。それが『めんつゆひとり飯』なのです。
 基本ごはん物漫画なこの漫画ですが、そこから逸脱はない。んだけど、でもごはん物漫画と言っていいのか、という微妙なあわいに位置するのもこの漫画。それはそれだけ登場人物がしっかりしている、ということの証左ですが、それにしたって味わい濃度しっかりあり過ぎじゃないですかねえ! というくらいに登場人物が濃ゆい。それについては1巻の段階からそのままなのですが、そのままが継続しているのにやはり常に濃い味に感じられる、というこちらの慣れを凌駕する濃さで今回の巻も突き進みます。
 一番出るのは当然めんつゆで食事を作る女、面堂露さん。この人の、キャラクターとしてのスペックは並々ならないものがあります。1巻でもものぐさが一周回っていた面堂さんですが、2巻ではそこは維持しつつ、それでも料理作る私すごくない!? という境地に到達しておりました。この辺に関しては才色兼備で完全無欠の十越さんと人間関係を崩さないレベルで対立するのも、既にお家芸。というよりは、十越さんの料理スキルが高まり過ぎていて、ちょっとこの人どういう風に料理の時間捻出してるんですかねえ……。と読者含めて恐れ戦かせるものがあるので、それもまた逆に笑い所として立ち上がっているのがこの漫画です。そして面堂さんは相変わらず食事作り中にイマジナリーフレンド十越さんが出てくるネタもきっちり。偶に、面堂さんが知らないことなので何も言えなくなるというムーブも見せてくれたりする辺りの如才なさは流石の領域に。この辺の要素の使い方は本当に特筆もののレベルで、4コマがすこすこ染み入ってくる見事なジョブです。
 さておき。
 カロリーを愛しカロリーに愛される男、保ヶ辺さんはこの巻では要所要所という使い方。あまりこの人出し過ぎると印象がこの人になってしまう、という危惧も垣間見えます。ポイントポイントの役どころできっちり仕事し過ぎてまたこの漫画の顔になりかけているんですよ。特に担当回といえる回で痩せる、というムーブを持ってこられるとは思いませんでした。それは軽々に使ってこないと思っていたんですよ。しかし、そこをきっちり使って、保ヶ辺さんの良さというのを見せつけてくる辺り、また流石と言いたくなります。そして最終的に太りなおすんですが、そこにきっちりと筋肉が、というので保ケ辺さんラバーの人が人知れず萌えていたりでもう駄目。舞さん……。太ってた方が他の人が来ないからとか欲得ずくだけど一途……。
 さておき。
 この巻で一番輝いていたのはもしかすると社長かもしれない。というのが立ち上がってまいりました。ピンポイントピンポイントで登場する、ある意味では保ケ辺さんと同じ位置付けのお人ですが、この人社長になれなかったら生きていけなかったのでは……。というムーブを連発してこられます。都合二回あるメイン回でも、異常なほどのずぼらと生活力の無さを色々なもので乗り越えているのがよく分かって、もう本当に。
 その内の一つであるお弁当回も、今まで十越さんにお弁当作ってもらってた、という驚愕の事実、でもないか。なのが発覚したり。流石にこれ以上は、と言っていながらやはりお弁当が恋しい、ってなる辺りにヒモ的メンタルを感じました。面堂さんにお弁当を、高級焼き肉弁当とトレードで、とする辺りに金持ちメンタルも感じましたけれども。この人本当に、社長してなかったらろくなことしてないな……。
 という感じに、キャラクターの存在感を無闇にひしひしと感じる。それが『めんつゆひとり飯』なのです。