感想 増田こうすけ 『増田こうすけ劇場 ギャグ漫画日和GB』1巻


増田こうすけ 増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和GB 1
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「ギャグ漫画日和新章始動! その名もGB!」。というのに、GBは“ギャグ漫画日和”の略なので、なんというか、その繰り返しを送った方も送った方ながら選ぶ方も選ぶ方。そうとしか言えないある種のいつも通りの増田こうすけ劇場。それが『増田こうすけ劇場 ギャグ漫画日和GB』1巻なのです。
 そう言ういつも通りのギャグ漫画日和なので、内容の方もいつも通りのギャグオムニバス。アトモスフィアの妙が普段のままというこのGBの感想についても、何話かピックアップして語っていきたいと思います。

第1幕『木曽権次郎記念館』

 謎偉人、木曽権次郎の記念館をレポートしていく形の回。しかし、最後にはそれが変化していく、という増田こうすけベストコンディションの内容である。細かくボケというか、何それ!? で刻んで、ナレーションで小笑いを取っていくスタイルか、と思ったら後半の展開で怒涛のホラー展開をぶっぱしてくる辺りが流石のセンスです。普通に小笑いのまま終わってもいいのに、妙な展開をぶっこんでくる辺りが特に。というか、偉人っぽい紹介だから、故人なのかと思ったら普通に生きてるのかよ! しかもなんか布石として妙な物を投げるというのがきっちりと山椒の効きしてくる辺りもやるなあ、と。これが一番最初というのでこのGBシリーズの試金石としてはきっちりと、現在の増田こうすけ先生の力が分かる回であります。

第5幕『フィアンセは夢追い人』

 フィアンセの夢見がちが夢見がちィ! な話。少女マンガ調というのは以前にもありました。それよりきっちりとネタとして格上げしているのが、この回。コラムニストになる、といういきなり仕事辞めて就く仕事のランクとしてどうなのか、というのからこの漫画だし、という不安が読者的に爆発してたらその爆発が予定調和だったという内容で、これで行こうと思った彼の精神性にむしろ敬意すら覚えるレベルでした。そりゃ読んでた人が倒れ込むわ。前のめりに倒れ込むわ。これは夢よ……って倒れ込むわ。この静かなるでも雄弁なツッコミと、どうしようもないコラムの内容が絡まって、高い完成度を誇る回でありました。

第10幕『サッカー部の存続』

 次の試合で勝ったらサッカー部の存続を認めよう! という宣告に来たのにあちこちで色んなことが起きて話が全く進まない! という回。部員達が皆フリーダムに動くため、宣告に来た校長が最低一コマ一ツッコミするレベルでボケが展開して、終始なにかがつっこまれて、終始何かが起きているという異常なボケ濃度の話になっていました。正直最後に校長がもうどうでもいい! 勝っても負けてもいい! ってなるのもしょうがないレベルでした。このボケつるべ打ち、怒涛のボケの具合とそれに対して的確に突っ込む校長のスキルの高さが合わさって、脳が混乱するぐらいの騒がしさでした。GBシリーズ最初の傑作認定したいと思います。いやあ、ホント訳分からんかった。

第15幕『ガラスの靴』

 シンデレラの話。なのだけど。王子様が速攻でガラスの靴を拾って持ってきたら、というだけならまだ可愛げがあったんですが、止めようとしても止めようとしても延々と追ってくる王子様の姿が、最初は笑えてたのに徐々にホラーへと変貌していくという増田こうすけホラーの一翼を担う作品に仕上がっています。魔女のおばさんが命がけで止めてるのに全く効果が無いというのとか、追いかけ方が木々を跳ねまわってとか、洞窟の覗き方がおかしいとか、シンデレラの部屋まで来るのが壁をよじ登ってとか、完全人外になっていくんですよ。最後はずるずると這いながら帰っていく絵を見せられて、この漫画こええ……。ってなりました。

 今回も平均してみると増田こうすけ味具合はいい感じでしたが、ちょっとしたホラー系の濃度があるので、これがどうなっていくのか。ホラー漫画家になるのか。そう言う部分を今後も注視したいですね。