感想 野上武志 『ガールズ&パンツァー リボンの武者』5巻


野上武志 ガールズ&パンツァー リボンの武者 5
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「VS黒森峰!」。とうとう黒森峰、その前哨戦めいてエリカさんの部隊と戦うことになるしずか姫率いる混成部隊。あの手この手を使うしずか姫に対して次々と打ち破っていくエリカさん。その激しい戦闘の先に、待っているものとは? というのが、『ガールズ&パンツァー リボンの武者』5巻なのです。
 かなりガチにネタバレするので珍しく続きを読む記法しますよ。
 この巻で重視される話というのは、エリカさんのことでありまして、それはつまり黒森峰のもう一つの物語でもあります。何故、黒森峰は敗れたのか、そしてそれからどう変わっていくのか。そういう話がされるのが、この巻といえましょう。
 みほさんが副隊長だった時、プラウダ戦でみほさんが川に落ちた味方を助ける為に動いたせいで負けた、というのは『ガールズ&パンツァー』の基礎知識ですが、では何故みほさんだけが動いたのか、という部分の解答、それは同時に黒森峰の弱点でもある、というのが提示されます。


みほさんだけが、だった

 つまり、黒森峰はトップの指示以外で動ける柔軟性がなかった、ということです。それが、その後の、みほさん率いる、各々が自分で考えられる大洗との戦いにおける敗北にもつながっている、というわけですね。
 しかし、今回の黒森峰、シュバルツバルト戦闘団は違います。


エリカさんの決意めいて

 なにせ、トップがエリカさんです。つまりまほさんではありません。当然、戦車道の時のようにまほさんを頼る、まほさんに指示を貰うわけにはいかないのです。上記のように、背中はないのです。
 なら、どう戦うか。それは、個々のメンバーが自分で考えること。アリサさんの言葉を借りるなら訓令戦術、ですね。大頭の手足としてあった黒森峰が、大きく変わった瞬間であり、この話をこのスピンオフでしていいのか!? という内容でもあります。大変とんでもないことですからね。本当にいいのか!?
 さておき。
 そんな真の力を見せつけるエリカさんですが、試合の方はしずか姫が策謀を巡らせています。アスパラガスの奮闘によるBC自由学園部隊の鼓舞に始まり、火責めからマカロニ戦法まで、多岐に渡る策でエリカさんを翻弄します。


ダー様も訝しむ焦土戦法


ドゥーチェも認める正しいマカロニ戦法

 最後は真正面で戦って疲弊していたエリカさん側に残っていたBC自由学園別動隊がとどめを刺す、というまさかの展開。ここまでしっかりと黒森峰の成長を見せておいて、最後は詭道であります。しずか姫自身が負けても、勝負に勝てればよい、というクレーバーな策謀ぶりが光る展開でした。
 しかし、この話はそこでは終わりません。まほさんが動きます。何やらこういう展開を予想していたのか、アンチョビさんたち、つまりアンツィオに何やら頼んでいたことがある様子。そして、この巻をこの言葉で締めくくります。

 果たして、ここから始まる戦車道とは、一体なんなのか。失意で泣き崩れるエリカさんと、ボロボロのしずか姫。そのどちらにも影響を与えるであろう、次の行動の前にこの巻は終わります。いいところで終わり過ぎでしょ!? しかし、ここからが戦車道、というのは本当に一体なんなのか。というか、それもこのスピンオフでやっていいんですか!? ってやつになりそうですが、果たしてどうなるのやら。
 さておき。
 そっちの方は次の巻、あるいは至近のフラッパー誌で確認出来ることで、すぐに分かるとは思うので、わくわく保留したいところですが、それよりも気になるのは、相変わらず何がしたいのかわからないダー様です。
 以前書いた文章のコメントでタンカスロンの正式種目化が狙いでは? というのがあってそれもありか、とは思ったんですが、それにしては迂遠だな、とも思ったんですよ。外堀を埋める形なのかもだけど、もうちょい直に掛け合う方が分かり易いのでは? というかそもそもタンカスロンの観戦はするけど参加はしてない辺りで、正式種目になって始めるとかではないだろうしなあ、とか。その辺が謎いかったんですが、その辺が少し氷解する出来事が、この巻ではあります。それが、ヤイカとダー様の掛け合いです。


お株を奪うイントロダクション


さらりとかわすダー様

 ヤイカとダー様に、何やら遺恨みたいなものがあるのでは? というのが見て取れる場面であります。お互いの主張は完全に平行線の趣がありまして、そうなるとヤイカのタンカスロン至上主義とダー様の何か裏のある行動とがどこかで関連しているのでは? と思わされます。その後、いいように踊ってくれて、という言葉もあり、これは単なる正式種目化とはまた違った雰囲気を持ってきています。本当にダー様は何をする気なのか。そしてそれをしたらまたまたこの漫画がガルパンの方に逆輸入しないといけない話を醸成してしまって大丈夫なのか、とにかくそう思わせる5巻でありました。