感想 市川和馬 『鉄仮面のイブキさん』3巻


市川和馬 鉄仮面のイブキさん 3巻
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「頑張れ喜多君、今後とも!」。ということで、最終巻となりました、『鉄仮面のイブキさん』。最後はぶっちゃけラブラブなんですが、それでもイブキさんは鉄仮面。その基本筋は最後まで変わらない、という盤石さで最後まで突っ走ったのであります。
 それにしても、喜多くんにはやられましたよ。この巻序盤まで、自分が伊吹さんを好きだと気づいていなかったでやがりますからね。あれだけ気持ちを向けていたのに、それがラブだと気づいていないとは。その辺は喜多くんらしいっちゃらしいんですが、それでもお前それで大丈夫なのか? と不安になる出だしでありました。しかし、回を重ねるごとに、というか喜多くんが伊吹さんへの慕情を認めるにつれて、あ、いけるかも、と思わされたりも。とはいえ、そういう気持ちをストレートに表せられない喜多くんだったりもします。すぐ照れちゃったりしちゃうんですよ。奥手かよ!
 その好意対象である伊吹さんも、相変わらず鉄仮面でボケをがんがんかましてくるスタイル。特にイブキイルミネーション(表情がないのをイルミネーションの光でフォローする)は頭熱そうだなあと思ったら実際熱いって言ってて、何故やる!? という事態でありました。この辺も流石の伊吹さんです。
 この二人がちゃんと恋できるのか? というのは微妙なラインで攻められていましたが、喜多くんが風邪をひいて、という回から徐々に、イケる! という雰囲気に。風邪ひいて、もうろうとした中で、優しい顔…、って喜多くんが言っちゃう訳ですよ。その後はやっぱり表情は分かってないので、この時のその台詞は願望だった可能性もあります。でも、少なからず伊吹さんを嬉しそうにさせた、というのでやるやん、喜多くん! という案件ですよ。
 その後、告白練習をしていたら伊吹さんがそこに、という展開を交えつつ、ちゃんと好きだと告白した喜多くん。伊吹さんの表情はそれでもやはり固かったんですが、それでも伊吹さんも喜多くんが大好き、と言って完全に両想いやったー! と外野なのにやたら嬉しくなってしまいました。この告白し合いが、表情豊かな喜多くんが色んな表情をしながら、でも最後に素敵に笑んで、対する表情の固い伊吹さんがいつもの固い表情のままで、でもすごく喜んで、というので、この漫画のテーゼは最後まで守られた、守護られた、と思うと大変嬉しく思うのでした。
 最終的にも伊吹は表情が固い鉄仮面のままで、これがずっと続くのだろうとは読者側からしても感じられますが、それは全く不幸な事ではない。むしろこの二人なら幸せな事ですらあるのだ。そう思うと、この伊吹さんの表情が変わらない、を最後まで貫き通してくれたことに、満足しきり、なのでした。