感想 よしむらかな 『ムルシエラゴ』9巻


よしむらかな MURCIÉLAGO -ムルシエラゴ- 9巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「桜剪会編、完結! ついでに白い流星編も始まって完結!」。至極あっさり気味に終わった白い流星編はさておき、ここまでのことをした、というのにというエンドを見せるのが、桜剪会編。その最後を収録したのが、『ムルシエラゴ』9巻なのです。
 桜剪会編、というか檜垣はいったいなにを目的としていたのか、それが個人的な興味だったんですが、その理由は思いっきり殴りつけたのにかわされた、という手ごたえの、そこに持ってくるか!? という見事なスカし具合でありました。
 檜垣の理由、それは死ぬ時に死ねなかった自分を見事に死なせること。桜剪会自体はそれ以外の、警察に喧嘩売る名目で色々人が集まったみたいですが、檜垣自身はその、自分が満足して、戦って死ぬことだけを考えていた、というのがもう、驚愕です。しかし、それを自供する藍子さんの言葉を聞くツルさんのように、確かにそう考えると腑に落ちることが多すぎます。なにせ、会の本拠が警察署の地下ですし、薬物を使えるから無差別テロも出来るのにしなかったりしております。あくまで警察に対してのみ、喧嘩を売っているという、潰してくれと言わんばかりでありました。なので、この説明に納得は出来てしまいました。もう少し、何か裏が、そもそも薬物はどこからか、とかそんなに長期間人を集めていられるわけもないから、その辺のフォローとかも、誰かがしただろうというのはあるんですが、とにかく檜垣の動機は分かりました。
 そして、檜垣は満足して死にました。あくまでそうすることが目的であるがゆえに、黒湖もガチで戦っていたので雨の誘拐殺人編みたいな酷い殺し方は出来ませんでした。しかし、檜垣の死に際して、一つ謎がぶっこまれます。
 それが、屠桜計画。ひな子ちゃんの名字たる屠桜に、計画という言葉が結びつくことで生まれる、大変な違和感。ひな子ちゃんに、何か後ろ暗いことがあるのか。それも、8巻でのあの黒湖との対面シーンと何か関係があるのか。そもそも、屠桜について檜垣に言わせようとしていなかった黒湖が、一体何を思ってその屠桜計画と言う言葉を聞いたのか。いつも以上にしゃっつらが悪い黒湖からその感情は読み取れませんが、話を遮ったりしているので、やはり何か知っているんだな、とは思えたり。屠桜計画、そして屠桜の子供たち。この言葉が意味するのはいったい。
 というかですね、子供たち、って聞いてもしかすると、ひな子ちゃんは一人じゃない。というより、あの姿のひな子ちゃんがたくさんいる、『とある魔術の禁書目録』のシスターズみたいなのであるのか、とか考えてしまったり。そのネタは流石に二番煎じだからしてこないだろうけど、何かしら今後に絡んできそうですね、屠桜の子供たち。
 さておき。
 今回の巻ではもう一遍、話があります。それが白い流星編。端的に言うとロボット物です。常々無茶な漫画だとは思っていましたが、それがとうとうロボット、それも人が乗って動かせるタイプ、それが二体でバトル、というのでとうとうそこまできたか、という感慨を得てしまいます。敵ロボットは武装及びシルエットはオーソドックスなタイプですが、黒湖側のロボットは白玉ロボ、とひな子ちゃんが言っちゃうくらいまん丸に手足が生えたもの。個人的にはエッグマン半熟英雄の)を思い出すシルエットでありました。それでそれ強いの? というとこれがきちんと強いんですよ。相手の高出力ビームを耐えたりしてるんですよ。なにこのエッグマン強い。と思ったら、もう一段階変身を残していたりします。そっちはヒーローチックなフォルムで、ますますこの漫画の行くところが分からなくなってまいりました。というか、市街に被害出しまくりなのはいいのかと。逃げないとえらいことになるなあ、って黒湖も言っているんですが、まあそりゃビルがバンバン倒れてたらそうなるわな。というか、あれだれが責任とったんだろうか。テロにしても被害の形がおかしいすぎるし。単なる爆発でなるものじゃねえからなあ。
 さておき。
 この白い流星編で重要なのは、ひな子ちゃんの再生能力っぽいもの、ではなくやはり凛子ちゃんと藍子さんのおねロリでしょう。凛子ちゃんも最初の頃のむき身ナイフのような感じが大分薄れて、マスコットキャラになりかけていますが、これにあなたのお母さんにして、と色々あってそう発言した藍子さんとのマリアージュで、やはり隙あらば百合をぶっこんでくるな、よしむらかなせんせは。と思い知らされます。この巻では他にも黒湖と千代さんのレズエロとか、バラの牢獄編でいた那々美ちゃんのライトレズエロとか、きっちり入れ込んでいて、やっぱりエロをきっちりやりたい時にやれる漫画家は強いんだなあ。という謎の感慨すら覚えました。社是。エロは力。
 ああ、最後に一つ。悟白亜、出てきましたね。ツルさんが言っていたのと符合する部分と、でもやっぱりなぜ、と言う部分がない交ぜになって、この漫画にどういうアクセントを加えてくるのか、という登場の仕方でありました。果たして、悟白亜は何を考えているのか、そもそも死んでいると言われているのになぜ生きているのか。謎が謎を呼ぶのでありました。
 とかなんとか。