ネタバレ?感想 よしむらかな 『ムルシエラゴ』21巻

MURCIÉLAGO -ムルシエラゴ- 21巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)
MURCIÉLAGO -ムルシエラゴ- 21巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)

 大体の内容。「クローズドサークルでミステリ! などと、その気になっていた俺の姿はお笑いだったぜ」。ミステリになるかと思われた今回の話は、しかしあっさりと決着を迎える形に。あまりにあっさり過ぎて、本当に一瞬クローズドサークル! ってなった私の姿はお笑い以外の何物でもありませんでした。しかし、やろうと思えばそういう道筋も可能なのかもしれない、という力加減だったので、また違う作品でそういうのやって欲しいですね。ムルシではもうやりそうにない……。
 そういう感じが、『ムルシエラゴ』21巻なのです。
 一族皆殺し事件の方は、あっさり犯人が判明して、最後の禍根も潰して終わりという所作がされます。特にそこが長々見たいと思っていたわけでもないのですが、とはいえあまりにあっさり解決してしまって拍子が抜けすぎて裏拍になっていました。
 この辺は、この事件の首謀者が女の子、というので、完全に黒湖のしたいようにする形になったのが大きいです。そのまま逃げても、タヒんだことになった人は生きてはいけないよ? でも、あたしならなんとでもできる。という完全にどこかの爆弾魔と同じ囲い込みをしかけている段階で、こいつ本当にあれよな! 頭おかしいよな! ってなります。
 そもそも、その人は今回の殺人の首謀者なわけで、通常ならお縄案件です。何人も殺していますし。でも、そこについて黒湖は頓着しない。殺したからなんだ? ともいわない。あまりにそこについて何もいわないから、首謀者の人が困惑するレベルです。
 ここの、殺人に対する特別観が全くないのを首謀者の人の困惑だけで魅せてくるのがこの漫画です。相変わらず黒湖ヤバイとしかいいようがない状態となっています。
 そして、実際殺人者で、この屋敷話の最後で頭首を殺すのを率先してやらせていた辺りも、黒湖がヤバイ所です。もう戻れない、というのを覚え込ませるというか完全に帰る場所を断たせる辺りがマジで狡猾です。個人的に絶対に敵に回さないムーブしないとヤバイ、と勝手に思わされているだけはあります。
 今回、特にヤバイと思ったのは、首謀者の人ともう1人の境遇と、これからのことを思って涙を流したりするとこです。ここ、嘘はついていないんですよ。嘘つく時にはカギカッコつくという不文律があるのが黒湖ですが、今回の言葉は嘘でも何でもないんです。
 ここがヤバイ。本当に相手のことを思って泣いているんです。殺しをした相手なのに。もうヤバイしか言えないくらい語彙が後退するレベルでヤバイ。今回ほぼ何もしてないのに、ここまで印象残せるのが黒湖です。ヤバイ。
 さておき。
 事件の方はミステリ? なにそれ? みたいなするするとした終わり方をしましたが、今回は不可逆なことが二つほどある状態です。
 その一つが、鳴海さんの腕の関係。ヤバイ力の子のせいで二の腕が断たれ、潰されてしまった鳴海さん。あまりに不可逆過ぎて、これこの漫画どうしてくるつもりなんだ!? と戦いたのですが、その解放が、ああそういえば、この世界ロボがあるんだった。という記憶に励起してくるものでした。
 何が起きたか、というのはアイアンマンしてた。といえばこと足りるんですが、こと足りていいのかという気もします。オブラートに包んでいうならなにしとんねんです。
 鳴海さんに一体何をさせるつもりなのか。というか使いこなせるのかそのトンデモ設定! ってなるところです。本当にこの漫画何が起きるかわからんとこありましたけど、このトンデモ設定はロボの時くらいに衝撃的過ぎて記憶から消えそうな内容です。1日置いた現在でもぶっちゃけまだ理解が追い付いていません。あんな能力いる!? というかいる話になるってどうなるん!?
 さておき。
 もう一つ不可逆なのが、ひな子ちゃんの能力がどうやら例の薔薇で作る薬と関係がある、ということが示唆されたことです。それも、かなり統率者としてという風になっています。
 この辺りはまだよくわからんというか、例示が一つだけなので全部に施行できるのかわからんのです。あるいはアンチ的な力なのかもですが、なんでまだ世の中に出回り始めた力に対してアンチなのか。なんでそれが既に完成しているのか。というのがさっぱりわからない。あるいはどっちもかなり昔から隠れて行われていたのか、という雰囲気であります。
 そして最後の方で出てくる悟嬢が屠桜に言及していることも相まって、ますます屠桜、というのが何だったのかというのが励起してまいりました。これこの話ちゃんとけり付くんですよね?
 ということで、ミステリ的な部分がさらさらと終わって拍子が抜けまくりんぐだったものの、かなり不可逆な話が盛り込まれ、また黒湖が囲い込みしだして、更にやっぱり抱いて、いや待て、これちゃんとまとまりますの? とお嬢様言葉が出てくる漫画。それが『ムルシエラゴ』21巻なのです。