よしむらかな 『ムルシエラゴ』12巻

ムルシエラゴ(12) (ヤングガンガンコミックス)

MURCIÉLAGO -ムルシエラゴ- 12巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)

 大体の内容「<剣聖>編、佳境のバトルに!」。ということで、珍しくバトル展開をするのが、『ムルシエラゴ』12巻なのです。

 バトル展開、というのはこういうクライム系漫画なら頻繁なのでは? という疑問を持つ門外漢の方もいらっしゃるでしょう。その気持ちは分かる。ヤングになっても男の子はバトル好き。ならばこそ、ヤング誌でもバトル物は花形な部分があります。なので、『ムルシエラゴ』もそのようであろうかと、思われても当然です。

 しかし、『ムルシエラゴ』は案外バトル展開は少ないのです。大体の場合、黒湖が一計を案じるがゆえに、ガチっとしたバトルにはそれほど到達しません。実質的に9巻の<桜剪会>編の檜垣との一戦以外では無かったとすら言えます。なので、実は<剣聖>編は貴重なバトル回なのです。

 しかし、ここでも黒湖はきっちりと策を巡らしています。こちらの勝利が掴めるフィールドを作って、そこに誘い込むのです。狙撃手や潜伏ポイント、科学の粋の武器などを色々と作って、です。その上で、更に相手のウィークポイント、黒湖が言うにはそこからしか崩せないという最大のものを、調べ上げてのバトルです。これだけ主人公サイドが万全な態勢で戦うというのある意味衝撃的なのですが、それを相手、剣聖は難なく通り抜けていきます。というか、この漫画の強い設定は大体無茶なのは12巻もくればきっちり理解の中にありますが、それでも狙撃手を近付かずに殺す、撃ってきた弾をはじき返して、ってのは無茶でしょー! って叫びたくもなります。でもやってしまうから、剣聖は剣聖なのです。

 さておき。

 その剣聖の正体が、この巻では明かされております。その正体については、漫画読み歴も長いとまあそうだよな、という相手、しかも二重人格というこれまたそうだよな、な状態でありました。しかし、元の能力では剣聖のけの字にも辿り着かないのに、人格変わったら剣聖になるんだから、二重人格とは恐ろしいのお! となります。便利! 真理! 二重人格! って感じです。でも、これ本当に二重人格なの? とも。ちょっと所ではなく剣技性能が上がり過ぎなように感じて、憑依とかならまたそうなのかもなあ、って思ってしまうのですよ。というのも、それだけこの剣聖の話は切ないお話なのです。才能がない者が、その才能の無さのせいで環境をクスしてしまう。でも、ちょっとずれただけなのに。それなのに悲しい話になってしまった。だから、霊の存在を信じてしまうくらいなのです。そういう無念というか、あるいは庇護心というのがあるように感じてしまうのです。切ないのー。

 さておき。

 しかし、この巻は百合話はほぼなく終わってしまいました。剣聖の姉妹百合という見方も出来ますが、でもちょっとどころではなく血生臭い話です。あるいは次の巻で黒湖が剣聖を寝倒す可能性もあるのかなあ、と。二重人格姉妹レズ丼! そういうのもあるのか。ってなるのかなあ。と変な終わり方を期待するワタシは悪い子なのでしょうか。

 とかなんとか。