湖西晶 『メタボリックダーリン』

メタボリックダーリン (アクションコミックス)
メタボリックダーリン (アクションコミックス)

 大体の内容「愛しの先輩はビック太くなってしまいました」。海外でパティシエの修行三年を経て、愛しのミツル先輩が海外から帰ってきた。しかし、その姿は見るもファニーにぶん太ってしまっていて……。そこから始まるラブ&デブコメ。それが『メタボリックダーリン』なのです。
 ラブコメは分かる。だがデブコメとは。そう思われるでしょう。しかしてその実態は、体脂肪率最高級生クリーム以上のぶっくぶくのミツル先輩のデブさと、デブ行動を楽しむもの。それこそデブコメなのです。
 とにかく、ミツル先輩のデブり具合はコメディの域です。とにかく太い。丸々。ボンレスハム。4コマ漫画で見せる事の出来る限界ギリギリの、あるいはちょっと踏み出したレベルのデブ。ある意味デブというものの持つファニーな部分を濃縮抽出して生まれた、稀有なデブキャラ。それがミツル先輩です。この人のデブゆえの問題、主に食欲、をコメディとして楽しむ。それがデブコメという言葉の真意です。
 太った理由はスイーツにかける思いが海外で爆裂して、ついでにドカロリーのものがあふれる場所だったのがその理由。海外からミツル先輩を追いかけてきたスレンダさんが出したものが、物凄いカロリーというか、ドカロリーという新たなカロリー表記が必要なレベルのもので、これ実際にあるんだよな……というのでおっかない気分にさせられて、更にこんなのをガツガツ食ってたらそりゃ太るわ! と納得もさせられます。バターのフライ入りチョコレートって、ちょっと意味わかんないですね……。
 さておき、ミツル先輩、細い頃はイケメンでした。湖西晶イケメンの中でも格段に高い位置に君臨しています。そのパーツを中心に寄るように太ってしまったので、上手く顔面パーツだけ切り取るとまだイケメンだったりするんですが、でもやっぱり周りのパーツ、脂肪があるせいで、相対的にファニーな顔になってしまっています。むしろ可愛いすらあります。可愛いついでに服弾けるネタや、装備の都合でパンダに、それもリアルパンダに見えるなどもやっており、このデブコメとしての立ち上がり具合は中々のものと言っていいでしょう。
 ラブコメの方はラブコメの方でこちらもちゃんと。基本的にデブコメのリリーフでラブコメってる感じ、デブコメの方が目立っている感じが気になりますが、それでもちゃんとラブラブコメコメしているので、こいつら可愛いなフゥーハハハハ! とどっかのマッドサイエンティスト笑いをしてしまいます。ミツル先輩の彼女であるナミちゃんが健気なんですよ……。デブだからって嫌いになることなく、いやあるいはだからこそミツル先輩のことを愛しく思う。対抗馬が出てきた時はちょっと腐した瞬間もありますが、でもほぼ全体的に健気。普通あれだけ太った相手を見たらかなりの愕然になると思うんですが、実際再会直後は愕然とはしてましたが、それでも嫌いになったりしない、本当にいい子なのです。
 さておき。
 この漫画、悲しいことに1巻完結です。1巻打ち切りと言ってもいいのかと思います。が、だからといって内容が最後の方に疎かが出るか、というとそう言うのは全く無いのです。むしろ1巻完結が自然だったのでは? というくらい見事なソフトランディングを見せてくれます。残り2話の所での、ミツル先輩の渾身の痩身化と、欲を無理に断った故にパティシエとしての能力が下がってしまう、というのがありつつ、ミツル先輩がパティシエとしてどこに向かうべきなのか、という部分へと決着していきます。2話でまとめたので最後の辻褄合わせとも取れる場所ですが、しかしパティシエとしての部分はきっちりと漫画全体を通底していたんだなあ、という納得は出来るものとなっております。この辺の流石の湖西晶先生っぷりはまさに見事。お美事にございまする! そう発言してしまった問題ないものです。
 ある意味では湖西晶先生の基本スキルの高さを見る漫画。それが『メタボリックダーリン』なのかもしれません。