とく村長 『ちこはゲーセン一番星! バイトはイヤだが金になる編』

ちこはゲーセン一番星! バイトはイヤだが金になる編 (アクションコミックス)
ちこはゲーセン一番星!バイトはイヤだが金になる編 (アクションコミックス)

 大体の内容「ゲーセンのお仕事!」。大田ちこさんが、金がないので食いついたのは、ゲームセンターのお仕事! ということで、ゲームセンターの舞台裏を、生臭くなり過ぎない範囲で見せていく漫画。それが『ちこはゲーセン一番星! バイトはイヤだが金になる編』なのです。
 この漫画、基本お仕事物です。それもゲーセン! ということで濃いオタ系の話になる、などと、その気になっていた俺の姿はお笑いだったぜ。という具合に、ゲーセンと言ってももっとカジュアルな、というか今殆どそれしか残ってないんですが、アミューズメントパークの話です。そういう意味では、ガチガチにゲーオタな感じな漫画にはなっていません。連射装置作ったりとか、へたったボタンの交換とか、基盤の入れ換えとか、そういうのは一切なし! エアホッケーとかプリクラとかが主となる内容です。先述通り、カジュアルな漫画なのです。その点はお間違えないよう、お願いします。
 という前置きはさておき、この漫画は基本的に燃える展開とかは皆無です。お仕事漫画ですが、設置や整備とか中心なので、カタルシスがあるようなタイプではありません。あっても、ちょっとしたいい話タイプです。ある意味ではこれもまんがタウン誌ではベターなタイプですね。そこで、ゆるいコメディをやっていくわけです。
 主役と言える大田ちこさんは性格はよいもののちょっと抜けているタイプ。この子をボケとして据えて、店長がツッコミをいれていくパターンを主軸として、この漫画は駆動していきます。中盤まで、この二人体制ですが、ちこさんが研修終了する辺りから、店員歴の長いっぽい河合さんや、上客な保津さんなどが増えて、にぎやかになっていきます。特に河合さんの加入で、二人でボケとツッコミが固定気味だったちこさんと店長の間に、もうワンクッション入ったのが良かったかと思います。河合さんのふわっとした立ち位置が、ボケにもツッコミにも機能するので、内容の展開がかなり幅が取れていくのです。これで、この漫画がお仕事物のわりにふわっとした感じとして着地した、と言えるでしょう。
 ふわっと。そう、お仕事物というのはシビアな面もあったりするものですが、この漫画はその辺はあまり押し出しが強くありません。これがガチの、旧来の意味でのゲーセンだとかなりシビアになったでしょうが、先述の通り、この漫画の舞台はアミューズメントパーク。いい意味でも悪い意味でもゆるい世界なのです。いい機械は売り上げのいいとこに行って、ちょっと型落ちが回ってくる、という部分などの、ちょっとしたシブさはありますが、それでもちこさんにそれなりの給料を払っても大丈夫な辺り、時代に適合するって大事だなあ、という感想を抱いたりします。未だにきっちり機能するなら、ゲーセンとしては勝ち組ですよ。
 さておき。
 ちこさんがボケ担当、とは先述ですが、しかしそれ故に話が陽性に行きやすくなっております。そして、案外ゲーセンの仕事、アミューズメントな仕事が向いているというのが、ちょくちょく入ってくるのもまた、妙な安心材料になっています。特に雨の日のサービスを考える回では、使える資源の少なさなどの縛りのきつさなどを乗り越え、UFOキャッチャーのぬいぐるみを取ったらてるてる坊主仕様をつける、という案件を創出していたりする辺りは、才覚を感じさせたりも。なので、妙に安心してみれるのです。繰り返しになりますが、ガチガチのゲーセン物だったら、もっとシビアでタイトでダークな話になったのかなあ……。とか。それはそれで楽しそうなんだけど、現実としてはそれだからそういうゲーセンがなくなっていくんだろうなあ、とかなんとか。
 さておき。
 好きな回の話をしながらお別れしましょう。やっぱり着ぐるみ回がそれですね。個人的な話で恐縮ですが、着ぐるみを着る仕事をやったことがあるので、あのニオイというのがどういうのか、読んでて思い出しておえっ! ってなりました。でも、それを乗り越えると、その着ぐるみとの一体感というのが勝手に生まれて、妙なこだわりが出てきたりする、というのもまた着ぐるみあるあるなので、そうそう! ってなりました。オチがそれネズミじゃなくクマです。というこだわり勘違いしてた! というものなんも秀逸でした。そういうコメディとしての立ち振る舞いもいいのが、この漫画らしいところ、と言える。そう思うのでした。
 よしまとまった! 終わり!