きらら少巻数終了作品の世界にようこそ 第四回

この項について

 まんがタイムきらら系の漫画は、現れては消えていきます。ある程度の長さで輝き続ける作品は、実は相当稀で、その周りには2巻、3巻と少数巻で終わっていく漫画が数多あります。
 そういう少数巻で終わった漫画について記載していく項が、ここ、となります。
 今回は少数巻終了のうちでの所謂3巻乙の漫画を取り上げていきます。
 3巻乙ともなれば、それなりに連載した訳で2巻乙とは雲泥の差がありますが、それでも4巻以降まで行った漫画に比べれば、仄かな輝きであった、と言えるものです。
 そんな微妙なラインである3巻乙の作品として、今回は2018年1月号のゲストから連載に至り2021年7月号まで連載した、かなり最近のやつである、なじみ『しょうこセンセイ!』を今回は取り上げてみたいと思います。
 それではいってみましょう。

第四回 なじみ『しょうこセンセイ!』

大体の内容

 8歳児の、先生! そういうのもあるのか。
 という訳で、海外の飛び級を駆使して先生になった吉田翔子先生が、子供だけど先生をしていく漫画。それが『しょうこセンセイ!』なのです。
 いきなり8歳です。普通なら小学生です。
 それが真面目に先生している、そんな翔子ちゃんさんを愛でるのが、この漫画の基本的な見方です。
 その頑張りを、ひたむきさをみていると、心が浄化されるように感じる。先生として色々ある、子供先生としても、でもきっちりと先生をしようとしているし、実際している。そんなまっすぐなものを見ると癒されるタイプの人には特に特攻です。
 そういう意味では『しょうこセンセイ!』は大変な癒し系漫画となっています。

子供だけど先生

 この漫画をより説明するとなると、昔ツイッターで見たというかなりあいまいな記憶の中で、しかし印象に残っている言葉があります。
 それは氷川へきるぱにぽに』の子供先生ベッキーとの対比としての、

ベッキーは先生だけど子供。
翔子ちゃんは子供だけど先生。

 というものです。
 うろ覚えなので大意と思っていただきたいですが、この呟き、どちらも知っている人にはしっくりとくるでしょう。
 基本的な地位、ステータスは同じなのに、この言葉の如く、ベッキーは先生している子供です。これには色々ありますが、全体的にガキメンタルです。
 対して、翔子ちゃんさんは子供だけど範を示さんとする先生なのです。浮ついたりすることもある。けど自分を先生だと律する精神がある。
 この違いが、この漫画のある意味ネタ被り的な部分があるベッキーに対する明確な差異で、圧倒するムーブとなっています。

伝説! 翔子先生の圧倒的先生ムーブ三選

 ここでは具体的な翔子先生の先生ムーブを確認して、いやあ、本当に先生ですね! って理解していただく為に、厳選された三話取り上げていこうかと思います。
 それではいってみましょう。

伝説! 矢野さんとの対峙!(1巻9話)

 提出するノートにイラストを描いていた矢野さん。後で消すつもりがそのまま提出し、それを翔子先生に見られてしまう! というある意味よくある展開ですが、ここで速攻翔子先生に見られてしまい、矢野さんはテンパります。
 翔子先生の素直な賞賛も、それが見られて、あと翔子先生に対する妄想をやたら濃く描いてたので、知られただけでダメージ大! ブッダ! 寝ておられるのですか! 案件です。
 その為、翔子先生が謝りに行こうとしても、逃げてしまう矢野さん。これは難題だぞ……! となる翔子先生の取った行動。それは矢野さんのしたように、絵を描くことでした。
 この回の伝説具合は、やはり翔子ちゃんさんのきっちり謝ろうとする意志でしょう。全体的にほぼ矢野さんのしでかした失態ですが、それでも見せたくないものを見た、そしてちょっと声大きくて周りに知られた事実を、謝ろうとするその姿は聖なるものです。
 その上で私も絵を描きます! ってしてくるから、そりゃ矢野さんが元から高い翔子先生株を爆増させるのもむべなるかな。
 高校生が幼女に持つ株としては不適当な気もしますが、翔子先生は子供だけど先生、人を導こうとする人なので、ある意味ではこれも適していると言える内容だったと思います。
 以後矢野さんが更に拗らせを発展させる点を除けば、ですが。
 しかし、翔子ちゃんさんの絵、絵というか工学的な設計図みたいなのが、専攻からくるやつだよなあ、と。明確に翔子先生の大学での専攻とかはそんなに情報多くないですが、工学関係だったのかな? という部分を適宜出すからこの漫画は美味いのよ。となります。

伝説! プールの時間だ!(2巻6話目)

 夏だ! 暑いだ! プールの時間だ! という理由で、翔子先生がプールを楽しみにする、そして実際楽しむという回です。
 この回のポイントは、翔子先生の水着姿です。というと、このロリコンどもめ! と何故かバックベアードが出てきかねない展開ですが、だがちょっと待って欲しい。
 小学生くらいの子が、プールだから水着! でテンション上がらない訳がないのです。一応、水難時の訓練という名目もあり、服を着てのプール、という形でもあります。エロス!((c)佐天涙子)ではないのです!
 とはいえ、服を着てプールになので、当然濡れスケはあり、主に矢野さんが濡れスケ! してましたので、完全にエロス視点がない訳でもない辺りがこの漫画の業を感じさせます。
 KNT(教科中濡れスケタイム)の後は、泳ぐ! という展開に突入しますが、ここで、さもありなんな事態が起こります。
 翔子先生、泳ぎが全然なのです! 8歳の子が泳ぎが全然、というのは、ある意味当然です。
 小学生低学年くらいなら、学校のプールが泳ぎ初め、というのはよくある状況でしょう。
 しかし、翔子先生は小学校どころか高校すら飛ばして大学に入学した人です。それなら、水泳全然は理の当然まであります。
 とはいえ、そういう弱点を残そうとしないのが翔子先生です。プール楽しいもありますが、ちゃんと泳げるようになる! と指導を受ける形に。
 で、実際どれくらい泳げんの? となりますが、小学生のプール授業などでよく見る、足を水面に叩きつけてただけの水しぶきな段階で、あっ、と察せられます。そこはサクッとはできんかー。
 その後補助なしでやるまでは行きますが、下手泳ぎあるあるのなぜか後ろに、になって、最終的にういてまての精神になっていました。翔子先生! 何事も一歩出すのが大事だぞ!
 それにしても、矢野さんの翔子先生ガチ勢っぷりは巻を、話をすすめるたびに濃くなってますね。
 この話の濡れスケ目に焼き付けといい、翔子先生の泳ぎの補助をしたいが為に涙目で食い下がったりといい、この子大丈夫なんだろうか。と素朴な疑問さえ浮かびます。2巻裏表紙でも主張激しいので、これが強火勢か、となりますが、わりとどうでもいいですね?

伝説! 翔子先生の、歌歌い!(3巻5話)

 文化祭! これまた翔子先生には経験の薄いとこ!
 という理由で、翔子先生、ガチで楽しみにしておりました。クラスの出し物、ストンプの練習もやり、息の合った動きが見せられるようになり、そして文化祭ではストンプ見事に成功!
 この段階で終わるパターンもあり得るとこですが、ここでさらに捻りを加えたのが、軽音部のライブのボーカルもするという展開。
 ストンプでは裏方だった、からこその表舞台に立つことにテンション高まった翔子先生はノリノリで軽音部のボーカルとしてデビュー! 観客を魅了するのでした。
 この回の良さは、その前の回の3巻4話目が準備回としてあることで、迫り上がっています。
 ちゃんと仕込みをして、積み立てて成功した、という当たり前なんだけどその当たり前をきちんとこなしたのは、それだけで素晴らしいというしかありません。
 基本1話で完結する回の多い『しょうこセンセイ!』の中で、積み立てていきつつ一話としても完成させて、というのがされているわけですよ。なじみ先生、マジ非凡な! となるのもしょうがない。そう思っていただきたい。
 その中で、さらに小ボケや翔子先生の無茶な非凡さネタもやってくるので、3巻4話5話はぶっちゃけ『しょうこセンセイ!』の中でも抜群の濃度になっています。濃すぎる、とすら言えます。
 これだけの濃度を、天才以外の無茶要素なしで描かれるのだから、『しょうこセンセイ!』は稀有な漫画だったのです。

そして伝説へ……

 そんな稀有の匙加減が、強く叩きつけられるのが最終回。ここでは、8年後の話がなされます。
 8年後。つまり翔子先生が16歳なのです! 8年きっちり先生を務め上げ、教師として中堅の辺りになっているのです。
 育つ。なんと聞こえの良い言葉が--。というくらいに、翔子先生はいい感じに美少女先生になっていました。
 まだ16歳、だけど先生としては中堅からベテランの域。このなんとも言えない倒錯感ったらないです。美少女が、先生のプロ! まだ、この鉱脈でこの漫画続けられるんじゃないか? までありますが、この回で最終回なのです。
 だからこその、可能性を見せつつ惜しまれて終わる、というムーブを、ここで見せているのです。
 実際、もっと翔子先生の活躍を見たかった、というのはクソタレ大きいです。まだ見たかったことはたくさんあります。進路話とかどうなるんだろうとか、ですね。
 しかし、最終回に向けた動きはよくある誤解系の話ですが、それでもきっちり終わりに向かっての流れは気持ちよかった。慕われているのがしっかり見えただけで、眼福です。
 その上で、8年後展開ならオチとしていい終わりの方向性になっていて、だもんできっちり終わったなあ、という爽やかな読後感を醸成してきます。この終わりがベスト! と言える出来栄えでした。
 だもんで、3巻乙な作品ながら、まとまりがよくて強引に終わりという感じもせず、納得の最終回、となっていました。
 それでも、まだ見たかった、というのはあります。掘れる部分がまだまだ全然ある。でも、この終わり方だされたら、それで満足するしか、ないじゃないか……。というレベルで、いい終わり方をしたとも言えるので、大変痛し痒し。
 それが『しょうこセンセイ!』の読後にまとわりつくモノなのです。
 この辺は3巻乙特有のそれです。2巻乙の強引な締めによるダイナミクスはないけど、長期連載のここまで読めた満足感、というのもない。大変微妙なのが3巻乙のアトモスフィアなのです。
 しかし、その中にあって、非常に納得のいく最終回をしてくれた『しょうこセンセイ!』は、だからやっぱり類稀なる漫画だったんだな、というのが締めの言葉です。
 ああ、今なじみ先生はまんがタイムきららMAXで、『コンビニ夜勤あくまちゃん』を絶賛連載中なので、気になる方は追いかけるといいでしょう。あくまと世知辛さのクロスオーバーの世知辛さは堪りませんよ……。
 とかなんとか書いて、この項は終了です。
 さておき。
 この話、せめて月一にしたかったですが、ゲームが楽しくてね……。モリモリやっちゃってね……。で、こんなに期間が空いちゃいましたよ。
 次回はもう少し早くあがると思います。大好きな作品なので、書きたいことはたくさんありますからね。多すぎてまとまらない可能性もありますが、そん時はそん時。
 という訳で今回はここまで。
 したらな!
しょうこセンセイ! 1巻 (まんがタイムKRコミックス)
しょうこセンセイ! 2巻 (まんがタイムKRコミックス)
しょうこセンセイ! 3巻 (まんがタイムKRコミックス)

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