感想 鴻巣覚 『がんくつ荘の不夜城さん』3巻

がんくつ荘の不夜城さん 3巻 (まんがタイムKRコミックス)
がんくつ荘の不夜城さん 3巻 (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容「さらば不夜城さん、また(その漫画で)会う日まで!」。ということで、なんとなく2巻乙を越えたものの、3巻乙になった不夜城さんの明日はどこかだ! という感じでエンドマークがついた『がんくつ荘の不夜城さん』なのです。
 この漫画の存在というのは中々に難しい所がありました。というのは、腋とか超好きだから! というのを惜しげもなくやっていたことではなく、この漫画が不夜城さんが描いた漫画である、という入れ子構造を導入してくることをもって、難しいという判断を持つことです。
 そう思うと、あそこは、とかここは、とか、とにかくメタ認知が必要なんですよ、メタ認知が! という声を上げるくらい、もしかしするとそういう思惑で……。と惑乱させられます。そういう風に描いた、というのの最上級の逸品なのでは? という錯覚めいたものすら覚えます。どこからどこまでがそうなのか。あるいは勝手に思わされているだけなのか。そこを突き詰めるだけでも、この漫画を多重に楽しめる素地の有難さを感じずにはいられません。
 さておき。
 そういう話抜きにすると、この漫画の構成要素の7割くらいである鴻巣先生の、あるいは不夜城さんの趣味である掲載誌のレベルで出来るギリギリのエロ要素というのが鋭角に突きたたってきます。
 3巻カラーのその趣味LOVE1000%ぶりは、ちょっと他の漫画ではお目にかかれないというか、それをするのを誰かが止めるやつなんですが、止めるやつがいなかった模様で鴻巣先生あるいは不夜城さんの趣味が爆発! 爆発! 科学戦隊ダーイナマーン! しており、そのあまりの趣味爆裂具合にそういうのに慣れているはずの腐れ読者の私でも軽く引くレベルとなっております。エロ要素、嫌いではない! が、限度がある! 狂気レベルでぶっこまれると流石に引く! やめて! 好きだけどやめて!
 そんな超濃度の趣味絵をしつつ、お話の方は不夜城さん三度目の打ち切りへと推移していきます。打ち切り慣れしているし、という不夜城さんでしたが、王様と逢瀬するタイミングで、やはり悲しかったのだろうなあ、という場面に遭遇します。が、それは4コマ目の後。誰も見ていないタイミングなのであります。この「4コマ目以降なら誰も見ていないさ」というのは、4コマ漫画の拡張の在り方として一つエポックだと思うのですが卿らはどうか。
 さておき。
 掲載誌での最終回も大変良い物でした。白仙ちゃんがメカクレからメカクレ眼鏡ロン毛になってパワーアップ! というのだけではないのですが、個人的にはそこがダイレクトアタック! イワアアアク! で、内容も入ってくるにはくるんですが、趣味の子や……俺の趣味ドストライクや……。ってなってしまうのも仕方ないと思っていただきたい。
 そこもある意味狙って弾ぶっこんできたとしか思えない、素敵な白仙ちゃんなのです。そういう部分に対する誠実さでは、鴻巣覚先生を超える者はないと断言できるくらい、信頼出来る人の性癖狙いなのですよ……。
 さておき。
 この漫画がどういう漫画だったか、というとやっぱり性癖狙い撃ちし過ぎ漫画だった、という印象が最後の白仙ちゃんで上書きされちゃうのも仕方ないのです。でも、メタな部分もまたこの漫画の持ち味という風にまくしあげてからの白仙ちゃんの性癖ドストライク、というので揺さぶりが強過ぎました。
 刺激物!
 そういう漫画だったんだなあ、という呟きを残して、この感想を終えたいと思います。