感想 わだぺん。『孫子のアイドル兵法!』1巻


孫子のアイドル兵法!(1)<孫子のアイドル兵法!> (ドラゴンコミックスエイジ)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

大体の内容「アイドルを制するのは、孫子の兵法!」。ということで、孫子の兵法とアイドルという二つの要素が、衝突することなく且つ過不足なく盛り込まれているのが、『孫子のアイドル兵法!』なのです。
この漫画は基本的にはご当地アイドルものであります。基本的には、というのは、1巻ではまだその初動にしかなっていないからです。今にもおっ潰れそうな商店街に活況を戻す為、アイドルを! というわりと安定した導入から、その為に目を付けた元トップアイドル旭丘すずなさんに、いつの間にかアイドルとして立ってもらおうとしていた富士塚さくらの方がアイドルとしてプロデュースされる、という流れとなっていきます。
そして、そこにあるのが孫子の兵法! ということで、この漫画をよくあるアイドルものでありつつも、それとは味付けが違うのが分かる部分が、孫子の兵法の扱い方です。普通のアイドルものに孫子の兵法が組み込まれる、というだけで十分変な漫画であるというのは分かっていただける気がしますが、これが単なる変種としての立ち上がりではなく、あくまで正統派なアイドルものにして、正統派な孫子の兵法の使い方なのです。
何故孫子の兵法がここで俎上するのか、というと、先に書いた元アイドル旭丘すずなさんの愛読書が、孫子の兵法だからであります。この旭丘さんの孫子の兵法が現代にも使えるのよ! という思想のもと、孫子の兵法を大活用するのです。しかも、それがかなり的確に使われており、単なるちょっとした小ネタとして孫子の兵法を使っていない、ガチ使用なのです。個人的には商店街の面々の意思が一つになっていないところを「上下の欲を同じうする者は勝つ」で看破する辺りがいいです。さりげない孫子の兵法の言葉の使い方、好き。
さておき。
この漫画の良さは、孫子の兵法ではありません。自然に組み込まれる孫子の兵法もそれはそれで確かに見所であり、一回1巻を見終わって話名を再度確認すると、成程正しくその通りじゃねえの、だったりしますが、そこじゃないんです。
この漫画の最大の長所は、元トップアイドルゆりりんこと、旭丘すずなさんの存在感なのです。


見た目の地味がゆえの良さ

見た目からして黒髪三つ編みおさげ巨乳眼鏡っ子で、地味さ加減も元アイドルというのが加わることで更に今の存在感に拍車を掛けます。これだけ見ると、アイドルとしての存在をどうにか消そうとしている、という雰囲気が見えますが。


コワイ!

いきなりこの顔ですよ。これだけで、この人が伏龍であるのが分かってきます。何があって元アイドルになったのか、というのは分かっていませんが、プロマイドを誰ももらってくれないという段でかなり何かしらのことがあったようであります。でも、ファンな富士塚さんのおばさんとか、アイドルの方たちとかには普通に慕われていたりします。だのに自分の存在感を消そうとしているので、たぶん相当アイドル時になにかあったのは間違いないんですが、本当に何が。
対してアイドルにしてあげる、と言われた方の富士塚さんは、アイドルに疎いというわりと女子高生にあるまじき存在で、でもあの商店街っ子として育っているなら案外そうかもな。とも思わせられる存在です。そうでないと旭丘さんの事情がすぐに分かってしまうという作劇上の都合もあるんでしょうけれども、そんな子であるから、後々の展開にそれが生きてきます。
そんな彼女に、旭丘さんはある種の原石であるのを感じます。


魅せる富士塚さん

この魅せる力というのは、富士塚さんの天性のもののようですが、それが実際どういうものかというのはまだ語られません。真に魅力というものがある、ということだとは思いますが、その源泉が何か、というのは今後明らかになるのかな、とか。まあ、そうういうことで、富士塚さんをプロデュースする気になった旭丘さんによって、富士塚さんのアイドル道が始まる、その一手目というところでこの巻は終了します。果たして、彼女たちの運命は。トップアイドルになれるのか? そして商店街の存亡は? その辺が気になるのでじっくり連載が続いて見せて欲しいと思います。
最後に、旭丘さんのベストショットで終わりたいと思います。


ここかわ