ざら:青木潤太朗 『つりっぷ 〜(株)千夜芸能の福利厚生としての釣り旅行〜』感想。あるいは釣りキチセリカ。

経緯を話そう

 皆さん、ざら先生を知っていますか?
 知らない? 結構! ますます好きになりますよ!
 ということで、知ろうが知るまいが思いっきり無視して、『つりっぷ 〜(株)千夜芸能の福利厚生の釣り旅行〜』(以下『つりっぷ』)について語ります。ざら先生のことが知りたいなら、wikiに行くんだな! 24時間365日やってるぜ!
 さておき、ここでわしのざら先生スキーっぷりを話しても意味がないので、経緯を話そうと言った口でしれっとそういうのもなしで漫画、『つりっぷ』について語りたいと思います。

『つりっぷ』について

 『つりっぷ』とは、弱小ながら登り途中の千夜芸能を仕切る島野さんと、その所属アイドルトリッパーズの面々が釣りをする話です。
 こう書くと落差がかなりあります。アイドルと釣り! そういうのもあるのか。と、一瞬テンションの上がる井の頭五郎仕草になるでしょう。実際わしもそうでした。そこは手薄! でも成り立つのか? という感じで。
 アイドル系作品は昨今爛熟期を越えてきた感があります。猫も杓子も、男も女も、どいつもこいつもアイドル、アイドル、アイドル! とアミバ顔になる方も沢山いると思います。もうアイドルネタは飽きたよ。となる人もおられるでしょう。
 だがちょっと待って欲しい。まだ、アイドルものには惚れる鉱脈があります。その一つとして、『つりっぷ』は立ち上がっていて、その立ち上がりに釣りが強く影響しているのです。それゆえ、ある意味では亜空のアイドルものにまでなっているのです。
 何が亜空かと言えば、釣りガチ勢の泉芹香の存在です。

釣りガチ勢が、釣りガチ漫画で、釣りガチなことをした

 『つりっぷ』という漫画の印象は1話段階だと島野さん50の泉さん150、というくらいに、泉さんの存在感が割合と度合いを変えるくらいに強いです。いきなり釣りガチ勢としての所作を全開にしだす後半などは完全に独壇場です。特に餌としてフナムシをモリモリ収得する辺りは、この子、相当のガチとお見受けいたす。と釣り門外漢のわしでも「あ、理解可能」してしまいます。
 大体の人がうぞうぞするフナムシなんて見ただけで多かれ少なかれ、おっ、ってなりますが、それを特に嫌悪感もなくモリモリ収得してる、というのは、それだけで釣り慣れ、ガチ勢であるのを見せつける見事な所作です。
 それ以外でも、釣り装備が値段的な意味でガチ、竿が10万だけど安く買ったのだとかだったり、制服に様々な釣り用の物を装備してるとこのフルアーマー感がそれに慣れているのが分かる絶妙なこなれ感だったり、あまりに自然にテクいことしてるっぽいけどそこもこなれ感があったりと、クドクド語らないけど漫画として魅せる方法でガチ勢っぷりを出す仕草でやってこられます。
 この段階で、この漫画は釣りをするガチ勢のこの子と、島野さん主体なのか、という理解を叩き込んできます。全体で6人メインたり得る人物がいる、島野さんと、泉さん含むトリッパーズの5人の6人、というので、最初からキャラ多くね? と思ってましたが、とりあえずメイン格は島野さんと泉さんでそこ以外は追々魅せましょう。という手つきでまず二人を立てた1話は、だからお美事! お美事にござりまする! と虎眼先生に対する虎子の如く頭を垂れるしかありませんでした。出来ておる喃……。やってくれた喃!
 そういう釣りガチ勢具合なので、もうこの段階でアイドルがつまなのでは? と思わせてもきます。アイドルと釣りで、アイドルがつま! これは亜空です。

ちょっと釣り人力高すぎない?

 とはいえ、泉さんの釣りキチ具合はガチ勢としてもわりとギリのレベルなのが2話目で明らかになります。
 若干ネタバレします。
 ネタバレしたとしても泉さんが釣りガチ勢だ、と分かると大したことではないのですが、まあそれはそれとして。
 泉さん、千夜芸能の事務所の裏手にあるドブ川で、今までも頻繁に釣りをしていたと明かされます。3分あれば釣りができる! という、釣りガチ勢以外にはちょっと意味が分からないことを言い出してます。
 釣り門外漢には、釣りって時間のかかる趣味だと目されていますし、実際私もそういう考えでした。基本1時間くらいいるやろ? と。
 だが、今は違う!(ギュッ)
 というくらいには、釣りに対する解像度が変わりました。3分でできる! そういうのもあるのか! と。
 ただ、その3分くらいの隙間時間を敢えて釣りで昇華するのは割と意味不明ではあります。ガチ勢思考すぎると言いましょうか。10分の休憩でドッチボール始める小学生じゃないんだから。
 そこまで釣りにくるくるしている泉さんが、だから釣り人力高すぎんか? と思わされるのです。ここまでの釣りガチ勢、どうやって出来上がったんだ? という出自がもう今の段階で気になりすぎです。いつかオリジンが語られる日が楽しみです。気が早い!

趣味人ものとして

 唐突ですが、皆さんは趣味人でしょうか。
 問いかけたので道義上、わしのことを話せばそれなりには趣味人やってます。主に格ゲーマーできらら漫画読みです。最近は格ゲーに重点がありますが、きららもまだまだ追いかけ甲斐があります。その二つの欲求を満たすために先月などは上京したりする程度です。
 そういう、何か一家言ある趣味人として、泉さんの島野さんに対するムーブは非常に良い。趣味人がノー趣味人を沼に落とそうとする時の音ー! 心地よいわー! となります。沼に落とす音はいくらあってもいいですからね。
 普通なら、島野さんも趣味の一つくらいは、となりますが、島野さんは元アイドル。全盛期は大忙しで趣味どころではなく、更にアイドル辞めてからは芸能事務所を持つために渡米までして勉強。そこでも趣味どころではなかったとのこと。
 この過去もなんかあったと匂わせてきますがさておき、それゆえに趣味らしい趣味を持っていない島野さん。その人を釣り沼に落とそうという漫画な訳です。この辺がその島野さんだけが新雪の野を持っている、という状況でここからどう染まっていくのかを見るのが、趣味人目線の楽しみなのです。方向性のアトモスフィアは坂崎フレディ『サバゲっぱなし』が彷彿とされますが、題材の違いで全く違う形になりそうです。ノー趣味人が趣味人になっていく様はなんぼあってもいいですからね。を合言葉にもっと沼に落とす漫画が増えて欲しいところです。

話も逸れたしまとめ

 『つりっぷ』はアイドルが釣りをする、とみ・せ・か・け、釣りガチ勢がアイドルもするみたいな、実質釣りガチ勢漫画です。アイドルものでアイドルがつまなのは結構大きい変化球ですが、刺さる人、特にノー趣味人が趣味人に落ちていく様が見たいという勢にはドンピシャだぜ! とピシャ岡さん顔でオススメできます。
 ということで、『つりっぷ』の感想というか、オススメの文章でした。繰り返しですが、趣味落ちする人はなんぼあってもいいですからね。
 とかなんとか。