手品先輩(1) (ヤングマガジンコミックス)
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手品先輩(2) (ヤングマガジンコミックス)
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手品先輩(3) (ヤングマガジンコミックス)
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大体の内容「この先輩はウカツ!」。種無高校には龍が住みよる。それもとびきりウカツな龍が!
ということで、奇術部の先輩さんと、その助手という名目が半ば強引に与えられた後輩くんがとりあえず手品に失敗しまくる漫画。それが『手品先輩』のほぼ全てです。
それだけ? とクエスチョンマークを叩き出された方もございましょうが、まあ、落ち着きなされ。世の中には様式美というものがあります。ある形へと予定調和していく、その美しさ。それが故の美しさという物があります。この漫画のとにかく先輩が手品に貪欲に取り組むけど、極度のあがり症の為に常に失敗する、という流れ。それはあっという間に様式美として凛然と立ち上がります。
それもこれも、全て先輩が悪い。先輩が常に失敗するのが悪い、のではなく、なんだか放っておけないという妙な心性を励起させられる様が悪いのです。そう、手品先輩は見ていないと駄目なんじゃないか、目を逸らしたくなるくらい失敗が酷いけど、でも見ていないといけない。そういう人の心の片隅にある構いたい欲求、見守りたい欲求をびんびんに刺激してくるのです。実際助手くんも、どうあっても駄目なことになるのに、勝手にしてろと放っておかない。どうしてもフォローとか突っ込みとかしてしまう。一応、学校が部活必須という点があるにはあるんですが、3巻で咲さんとその弟が加わるまで部活として成立していなかったのに、結局いてしまう。というので、如何に手品先輩が放っておけない、それも色んな意味で、というのがわかろうものです。
ここまで放っておけない感があると、LOVEの空気になるのでは? と思うのが人情ですが、それはほぼノウ。それっぽい雰囲気になったりする局面が何回かあるんですが、それが微妙に実らない形で回が終わってしまうので、もしかしたらその道筋もあるのかもしれないと思わされつつも、はぐらかされている、という趣深いものになっているです。でも、くっつくのも見えないというか、そうすると今の空気なくなっちゃうから無理からぬ。とも。
さておき。
この漫画の良さは手品先輩の迂闊さ加減を見て変に目が離せない点もそうですが、微妙なエロスも含有されています。さすがヤングマガジン! と喝采を上げるほどではないのですが、それでも、ガチのエロスものと比べて控えめ、だからこそだろうが! とコミックマスターJに言われるくらいに、高過ぎないエロスの良さという物を再発見させてくれるところがあります。イマドキ、もっとエロスエロスした漫画はたくさんあります。でも、そこに行き過ぎないで、しかし妄想を刺激するエロス感を出す。中々出来ないことじゃないでしょうか。偶にびーちく出ることもありますが、それが本当に偶に、と言う点をもってしても、この漫画の清純派のエロス具合が知れようものです。
そして、それを手品先輩がする、というのがこの漫画のもう一つの様式美です。ハチャメチャ失敗でちょっとしたエロス。この美しき流れ! 天の風琴が奏で流れ落ちるこの旋律! 素晴らしいじゃないですか。ここまでパターンが素早く作られて、それが王道とばかりに突き進まれるこの気持ちよさですよ。先に書いた目が離せない、にはエロスがあるからという但し書きが実は付くくらいです。失敗からエロス! が脳に刷り込まれていわばパブロフの犬状態ですよ。一気に読むと本当に脳がそのように矯正される感覚を覚えるくらいです。ある意味ヤング誌なら正しい刷り込みとも言えますけれど、でも本当にこれが普通に連載できているって素晴らしいなあ、という謎の感想を書いてこの項を閉じたいと思います。