感想 奥十 『マツ係長は女ヲタ』1巻


マツ係長は女ヲタ 1巻 (まんがタイムコミックス)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

大体の内容「あ、この人ガチだ」。ウメ君さんの上司の係長のマツ女子は、女の子アイドル大好き女ヲタだったのです。それが何故ウメ君さんに露見したのか分からないままスタートするのが、『マツ係長は女ヲタ』なのです。
女性のオタクの方が出る漫画、というのは昨今それほど珍しいものではなくなりました。そこには色んな先人がいますが、特に顕著で現在も連載されているとすると、やはり丹羽庭トクサツガガガ』辺りを、この漫画の設定を聞いて想起される方も多いかと思います。
オタとしてのあるあるを、生活感たっぷりの中に描くのが『トクサツガガガ』の一つの特徴ですが、そこにあるあるあると問題提起、そして解決と妥協。そういうのを、わりとベタ足つけてやる漫画なのもまた特徴です。その様は、リアル系という言葉でくくってしまえる、オタクファンタジーの一類と言えます。
それに対して、『マツ係長は女ヲタ』は、スーパー系オタクファンタジーと言えるでしょう。どういう理由でか、と言えば、わりとファンタジーのパワーが強い点がそれと言えると思います。
トクサツガガガ』の仲村さんがわりとベタ足つけている、とは先に書きましたが、それにプラスして特撮オタという部分が、時に笑い時に悲哀として描かれます。そして対象が大変閉じているので、上手く外で言える人が少ない、という部分も抱えています。
対して『マツ係長は女ヲタ』のマツさんは、周りに言えないのは同じくするものの、出せる時にはヲタ精神をしっかりと出してくるのです。そこが極力抑えめというリアルなオタ像である仲村さんと対比して、スーパー系と言える部分です。
そのスーパー系である部分を励起しやすいのが、部下であるウメ君さん以外がいない時。この時のマツさんのパワーは成程スーパー。と言えるレベルで猛り狂います。普段はそうとは見せないけど、しろちゃんさん(アイドルグループの中の推しアイドル。影が薄い)のことが絡むと普段でも爆発させたくなるくらいのものを持っていて、これウメ君さんが知らなかったらいずれ仕事場でバレの爆発を起こしていたのでは? という有様です。でも、仕事場では分別をつけて、偶にコンサート行けなくてテンションダダ下がりとかするけど、仕事は出来る。この辺の切り分け具合もまた、仲村さんのそれより際立っているし、ビビッドである。ゆえにスーパー系だなあ、という感想を抱く理由でもあります。
さておき。
この漫画で一つ疑問に思うことがあるんですよ。それはマツさんがウメ君さんにどうしてヲタとばれたのか。その点です。
え? それ最初に描いてないの? って思うじゃないですか。
ないんですよ。いきなりマツさんが女ヲタバレしているんですよ、ウメ君さんに。1巻内容中では、その5W1Hの大半が全く答えられないのです。あーもうどゆこと! とロイドさん声が出ようものです。
しかし、それが傷になるか、というと実際これだけのネタを秘匿するには何か理由があるのか、という邪推権を行使することで、全く問題ないといえる漫画ではあります。いつか語られるだろうけど、今出なくても問題ないや。とでも言いましょうか。その辺、強引に突っ切っているのがむしろスウィングしているからか、読んでいたら気にならなくなるんですヨネ。これはこれで、ありと言えましょう。
さておき。
この漫画の良さ、というのはスーパー系であるところですが、それも陽性にスーパーなのがいいのです。マツさんがひたすら力強いヲタで、見ていて羨ましいというか、襟を正したくなるというか、とにかくパワーに満ち溢れています。趣味に全力な人というのは、こんなにも映えるものなのか。とか思ってしまうくらいです。この感じ、嫌いじゃないどころか大好物なので、もっと続いてしまうといいや! と激を書いて、この項を閉じたいと思います。