大体の内容「絶望がお前たちの、ゴールだ」。というのは若干些事だったりしつつ、この作品の根幹に少しずつ触れていくのが、『風都探偵』3巻なのです。
今回は爆弾低気圧の影響で雪に閉ざされた館で起こる事件を解く話。風都からそれほど遠くないのに、山深いだけであれだけ吹雪く、というのが個人的には妙にツボですが、それはさておき、この事件でこの『風都探偵』という作品の根幹、『仮面ライダーW』ではない、『風都探偵』としての主動力がより露わになります。
この作品の根幹というのは、オーロラドーパント率いる新たな敵と、ガイアメモリの効果で超能力持ちになった者、<ハイドーブ>。そしてときめさんの記憶です。今回はどれも触り程度でありましたが、これを駆動系として進んでいくのだな、という手ざわりは伝わってきました。この根幹を持って、どうこの作品が動いていくのか。その辺が楽しみですが、それはさておき。
今回は一つの事件でわちゃわちゃする巻なんですが、クローズドサークルでの殺人事件、でもこれちょっとすぐ犯人分かりませんか? やたらハイペースで死人が出てますけど? とみせかけ、きっちりと違う形にもっていかれます。その持って行き方が大変素晴らしいですんですよこれが。館の富豪の因習と、ガイアメモリがちゃんと絡まるその様は美しく、更に殺人事件だと思われていたものが一転するところなどは芸術的とすら言えます。この辺の、ガイアメモリが関係するがゆえに出来る事件、というのが本当に上手くて、流石の三条陸脚本! と唸ってしまいます。元々の『仮面ライダーW』でもガイアメモリがあるから出来る、というのを毎度されていましたが、漫画でもきっちり出来る辺りは本当に脱帽の域です。しかも、照井竜の変身からトライアルとか、サイクロンジョーカーエクストリームの漫画での初お披露目とか、たくさんの見せ場を持ちつつも、印象がばらけずに且つ一つの巻できっちりその話が完結するというネーム力というか、構成力もきっちり持ち合わせている訳で、なんだよ、名作かよ……。としか言いようがありません。この構成をきっちり作る三条陸。それを漫画としてきっちり一つのパッケージに収められる佐藤まさき。どちらも欠けては、おそらく回らないだろうことを考えると、まさしくいい相棒を見つけたなあ、という感想がまろびでます。
さておき。
今回で個人的に凄い好きな場面は、フィリップが翔太郎にこの事件の核心の推理を話す、その前のところ。基本甘ちゃん、ハーフボイルドな翔太郎ですが、それでいて、いやそれだからこそか? とにかく人を見る、という部分がしっかりしているというのを、あの子は犯人じゃない、というところでの理由がきっちりとしているのと、それについてフィリップに流石、と言わせることできっちり見せてくるところです。情に左右されやすいけど、見るべきところはきっちり見ている、っていうのがいいんですよ。そしてフィリップはそっち方面が苦手というか、やたらドライなところがあるから、そういう意味では翔太郎は大切なバディであり、逆もまた真なり、なのが見てとれる訳ですよ。この辺もまた、上手いにも程があります。
しかし、エクストリームとかトライアルとか、この段階で出してしまっていいのかしら、とも思ったりも。もうちょっともったいつけるかと思ってたんですが、しれっとやっちゃいましたね。これは更なるパワーアップの可能性というのがあるのかしら。でも、強化関係は全然方向性が見えないんだよなあ。ほんと、どうなるんだろう。
とかなんとか。