ネタバレ感想 佐藤まさき:三条陸 『風都探偵』11巻

風都探偵(11) (ビッグコミックス)
風都探偵(11) (ビッグコミックス)

 大体の内容「脚本三条陸の完全構築美!」。いきなりの質問で恐縮ですが、皆さんは三条陸脚本だとどれが好きでしょうか。これについては名脚本家三条陸なので数多の話が出てくるでしょう。下手をすれば、紛糾する事態かもしれません。
 ですが、そういう論争を一発で黙らせることが出来る回、『異端児 d』が爆誕しました。黙っても再び喋り出すと思われますが、それでも一度は黙りこくるレベルの傑作エピソード。それが『異端児 d』であり、それが最初から最後まで収録されたのが、風都探偵11巻なのです。
 アニメ化! の報も出た『風都探偵』、どういう作品かという話を少しすると、『仮面ライダーW』の公式続編であり、新たな敵「裏風都」との戦いを描いたシリーズです。
 そして、この11巻の『異端児 d』は、その裏風都側の首魁である万灯の依頼で、この作品のヒロインであり、謎めいた美女であるときめさん奪還を依頼される形になります。
 この『異端児 d』、色んな作品と同様、情報の糸のによって編まれている訳ですが、この編まれ方のダイナミズム、それでいて大変繊細な手つきも見せて、ぶっちゃけて言えばこの糸をこう使うかー!! って膝をダイレクトアタックするレベルでポンポンして膝が破壊されました。それくらい見事な仕事であった、といえばいいでしょうが。
 では、どのように? というのでこっからネタバレでいきますが、今回の敵である出紋というのが、裏風都からの造反者なんですが、これがときめさんを誘拐しています。
 しかし、裏風都の面々なら、神出鬼没に風都に出られるから、あっさり奪還できるのでは? というのがまず浮かぶ。そこを出紋の能力と、その抜け目なさ、そして裏風都の事情を知っているがゆえに出来る、無茶苦茶な方法で解決しているのがまず上手いんですよ。
 裏風都、今はまだ拡張を続けている段階なんですが、その拡張に対して風都と対応していない所がある。
 それが地下。地下には裏風都はまだ勢力を広げていなかったのです。その必要もないというのあるでしょうが。
 しかし、それを知っていて、更に地下に潜るという能力を誇る出紋は、その隙をついて、地下に居城を築き、裏風都は元より翔太郎達も手が出せないところにいるのです。
 出紋のディープの能力以外で、この地下に行く方法があるのか!? というのが今回の肝です。
 この肝はときめさんの頑張りと、出紋の油断。そして照井の無茶です。スタッグフォンで情報収集していて、それが出紋に見つかり、使えなくはされたんですが、破壊しなかった、というのが出紋の油断。通信が出来るという事は、データ人間となれるフィリップがそこに移動できる! ということでその意図がそう来るかー! という流れと、地道な調査で電気をどこかから手に入れているというのを割り出したこと、そして照井に新能力追加でその電源のところから一気に突破! これでときめさんは救出される運びとなりました。
 バトル面ではその能力で直前でオーロラドーパンド万灯をいなしていたディープ出紋ですが、翔太郎達のファングメタルの力には相性悪く、ついでに翔太郎達もぶち切れだったので、きっちりと今までのうっぷんも吹き飛ばす形になっていました。このカタルシス加減も素晴らしい出来栄えです。
 とはいえ、裏風都の情報を持っている出紋なので、最終的には裏風都の面々に惨殺されてしまい、裏風都の謎が解明することはありませんでした。この辺の、相手の組織の情報が手に入りそうで入らない、ようで少しはある、という匙加減もバツグンです。とりあえず、裏風都にも行けない場所がある、そして、拡張しているということは始まりの場所がある、くらいの情報は勝手に読み取ってます。この辺も上手いですね?
 そして、ときめさんの謎の方も少し解明されてきました。まだ全然茫とはしていますが、それでも何かの実験が、ときめさんに関係しているのは見えてきました。そして、ドーパンドだった可能性も。なんの実験だったのか? ときめさんが裏風都に出入りできる理由は? そしてジョーカーメモリとドーパンドがどういう関連があったのか? その辺がまだ隠されたままとなっていますが、これ結構一気に情報出るかもな……。とも。
 さておき、この漫画もまだまだ続く形ですが、アニメの方がどの辺りまでやるのだろうか、というのは当然気にかかります。中途半端で終わらず、作品が終わるくらいまでのクールやって、きっちり全内容やって欲しい、というのが偽らざる本音ですが、まー、そりゃ虫がいいよなあ、とも思います。
 とりあえず、アニメを見て漫画に人が流入して、その余勢を持っていいぐらいのタイミングでちゃんと情報を出し切って終わってほしい、とは思います。いや、これも虫がいいか?
 とかなんとか。