今更『二ノ国』映画を見たのでネタバレ感想を。

何いきなり話しかけてるわけ?

 以前よりアレ映画として聞き及んでいた『二ノ国』。アマプラにあるやん! だったので、動画制作の片手間に見てみたのですが、成程、アレ映画とされるだけはある、という特大の納得を得たので、それについて感想を書くことで、この記憶を他山の石としたい。そういう項になります。

最序盤の問題点について

 この映画は、違う二つの世界を行き来する、というタイプの話ですが、その最序盤から微妙さを感じる出来で始まります。
 元の世界、作中では一ノ国とされる現代日本の、その描写は悪くはない。とてもベタな展開だけど、とりあえず出すべき情報はしっかり出している。
 そこはいいんですが、問題は別世界、二ノ国の方が全然ワクワクしない出来栄えなことです。一ノ国の方がベタなのは、二ノ国の方とのギャップの為にそうあれかしですが、二ノ国の方もきっちりとベタなのはどうなのか。
 一応、色々と手を変え品を変え、二ノ国を見せてはくるんですが、魅せてくる訳ではないので、そこがまずひっかかるというか、折角の別世界が勿体ない、という印象ばかり持ってしまいました。一々ベタなので、見ていて惹かれるとこがないんですよ。

極めて察しが悪い

 序盤から躓いてしまったので、その後の展開も微妙に感じる所は多かったと言えます。とりあえず主人公が察しが良過ぎる点と、親友が察しが悪すぎるという部分が気になりました。
 主人公の方は、なんで命の危機で世界を渡れる、というのをほぼ初見で気が付くのか、というのが気になり過ぎました。察しが良くないとあの場面どうにもならんかったとはいえ、もうちょいなんかヒントあった方がいいのでは? という気がしたのです。
 親友の察しの悪さについては、察しの悪さというより都合よく扱われ過ぎているという方がしっくりくるかもしれません。
 一ノ国と二ノ国で命が繋がっている、というのがこの作品の肝なんですが、その部分について敵側の甘言にあっさり乗りってしまっていたのです。一ノ国の好きな相手と対応する二ノ国の姫が死ななかったから、その好きな相手が死にそうになっている、という敵側の偽情報をあっさり信じて、姫を殺しに行こうとするんですが、その前にその姫を助けたから好きな相手助かっとるやん! というのがあって、なので察し悪すぎる感が出ていると感じました。
 二ノ国のことを夢の世界だ、と発言していたりしますが、そこはまあいい、そう思うのも無理はない。でも、その夢の世界と思っている世界の姫を殺したら彼女が助かる、ってどういう思考回路なんですか!? というのもあったりします。無茶苦茶やん。だから甘言にも乗ってしまうのですが。
 ただ、実際に命が繋がっている、という話は二ノ国の誰もしていないというとそうなので、甘言に乗るという可能性が微レ存ではあります。実際助けられた、という事実がしっかりあるので、それで乗るのはやっぱり変に感じる所ではあります。まあ、主人公がそれを察するのもそれはそれで察しが良過ぎる感もあるんですが。

とりあえず口頭説明

 この映画はとにかく口頭説明が多いという印象があります。映像としての描写が無いという事はないんですが、それでも誰も彼も口頭で説明してくると感じてしまいました。そのせいもあって、親友が敵側に口頭説明で姫を殺すことの意味を教えられる場面とかでは、あれ? これもしかしてあってるの? となるので困りました。完全に口頭説明ばかりで情報が上滑りしているというか、口頭説明至上主義みたいな感覚に陥っていて、混乱があった、といえるでしょう。
 この口頭説明で一番今それ言う? というのは、一ノ国の人が二ノ国にいると不幸になる、という話が最終盤の、主人公が一ノ国に戻るか逡巡しているところで言われるところでしょう。え? 何その情報、今言う? みたいな唐突な口頭説明で、しかしそれがちゃんと伏線というか、ある理由にはなっているという、困ったことになっていました。

その情報分かりませんからー! 残念!!

 口頭説明が多いのもあるんですが、逆にそれはこっちは分かりませんよねえ!? という情報をお出ししてくるところもあります。敵側のキャラが、王女暗殺の為に使った魔法の匂いがある! というのが、それです。
 ごめん、匂いは分からない。
 というか、そここそ、匂いがあった所で何か匂いが、みたいな台詞が要るところなのに、そこがさっぱりだから、匂いとか言われても映画では我々分かりません! となって、この辺の情報の出し方があれ過ぎて困りました。
 本当に、そここそ一言要るだろと。

暗殺の仕方がおかしい件について

 この漫画の肝は王女の命で、その為に一ノ国の親友の彼女ポジが命を狙われる展開があるんですが、二ノ国の方でもその王女を暗殺しようと動いていたりします。命が繋がっているなら、一ノ国で殺せばそのまま死ぬのでは? という疑問が、そこで沸いてきます。
 実際、彼女ポジの命が一回は助かるんですが、その次にガンになって余命が、とか言い出します。それで、親友が王女を殺せば! と錯乱するんですが、そういう風に死にそうになるなら、やっぱり一ノ国で殺せば二ノ国の王女も死ぬのでは? となる為、ならそういうことをすると呪い返しのある王女を直でやらなくても良かった気がして、そしてその行動が仇で正体バレすることになるので、ますます訳が分からなくなってくるのでした。なんで二ノ国の方でもしたの?

理屈は分かるんだけど、その情報の出し方で?

 で、色々あって主人公は二ノ国に残るという選択肢を選ぶんですが、それ、不幸になるじゃないの? というのが、王女から語られていたのは先述です。しかし主人公は特に不幸になることはなかったのです。
 この辺がなんで? と思うところですが、その解答が、親友の最後のモノローグ部分で理由らしきものが語られます。それが、主人公が元々二ノ国の住人だった、親友と対応する人間だった、というのです。
 普通に考えるとはてな? なんですが、それは一応筋が通っています。というのも、主人公は過去の事故のせいで足が動かない、というキャラクターです。なら、親友も足を患ってないと対応してないやん! なんですが、そこは、二ノ国の人間だから、一ノ国で不幸を得ている、というのが解になるかと思いました。一ノ国の住人が二ノ国にいたら不幸になるなら、その逆もある。という事だと思うのです。
 とはいえ、その辺についての答え合わせは作中では全く無いので、完全に妄想かもしれないのですが、そう考えると対応している親友に足の不調がないのが解答出来るかと、思うのです。
 色々納得いきませんが、一応、筋は通るのが困る。

この演出ではなあ!

 さておき、主人公が二ノ国に残る、というのが引っかかる人が多いようで、色々言われているようですが、主人公が二ノ国の人ならしょうがないな、という部分もあります。
 しかし、それ以上にこの映画の演出のせいで、その部分での葛藤が無く感じてしまうところはあると思いました。というのも、主人公の人間関係が大変狭くしか描かれていないのです。関係者が全然いない、というのが、それならすっと切れてしまうな、という理解を導いてしまうのです。
 実際問題、主人公と作中で深い関係があったと描かれた人が3人くらい、というのと、二ノ国の住人ゆえに、一ノ国に親も何もいない、というのがあって、それならちょっとでも葛藤しただけましまである、と感じました。むしろあの瞬間だけとはいえど葛藤があったのが不思議なくらいです。

結局何がしたかったのか

 この映画の、描いていたら浮かんできたものは何だろう、と考えましたが、特に何も浮かんできてない気がして慄然とします。描いてたら浮かんでくるものはあるものですが、うーん、なんだろこの映画。という印象しか湧きません。主題から描いているんだろうけど、その主題が見えてこないというか。
 主題無しで描いたとしても、でるものはあるものですが、それを受容出来ない、というかなんも感じなかった、というのが個人的な解になります。何がしたかった映画なのか、というのがついぞ見いだせなかった、という感じでしょうか。実際、見所はどこか、と言われても全然答えられないので、推して知るべしです。
 もうちょっと見ればあるいは、ですが二度見る気になるものでもないので、とりあえずある意味虚無戦記なのもあるのだ、というのを胸に秘める感じで、この項を終えたいと思います。
 いや、ほんま何がしたかったんだこの映画。