三条陸:佐藤まさき 『風都探偵』4巻

風都探偵(4) (ビッグコミックス)

風都探偵(4) (ビッグコミックス)

大体の内容「戦略的に正しい敵組織の代表例」。今回はとある事情で腕を奪われた漫画家さんが依頼主。調べてみると、同じような人が幾人もいるのが発覚。それを追っていくと、オーロラドーパント、万灯達への足がかりが。そんな感じで一つの事件の顛末と、敵組織の戦略的正しさを感じるのが『風都探偵』4巻なのです。

 事件の方は相変わらずの見事なシナリオで、それを描きだす手管も素晴らしいのは変わりません。相変わらず、これから『仮面ライダーW』に入るのもいいというレベルの仕上がりです。この4巻は、特に一つの事件がきっちり一つの巻に収まって終わる、という見事なネーム力を感じさせるもので、この漫画に一生ついていく気持ちがふつふつと湧いてこようものです。売れているだろうけど、もっと売れるといいや!

 ということで、事件の内容についてはあえてスルーして、今回は敵組織、名前出てないので仮に彼らが目指すものの名前、ハイドープとしますが、その戦略の正しさについて語っていきたいと思います。

 今回の巻で一つはっきりしたのが、ハイドープは仮面ライダーとはわざわざ敵対しない、ということです。色々あって今回の敵、パズルドーパントが追い詰められる形になった時に出てきた万灯が、はっきりと仮面ライダーとわざわざ敵対はしない、出来るだけスルーすると発言したのです。これが全く理に適っている。そういう話をしていきます。

 仮面ライダーWは今まで風都でドーパント犯罪を潰してきた力がある。その過程で、ハイドープと同じような超人類の扉を開いている可能性すらある、と万灯はいいます。実際、ガイアメモリを長年使っていて超能力に目覚めたハイドープとなったのが3巻の事件の首謀者でした。それより苛烈な戦いをしてきた翔太郎たちに、それと同じものがあってもおかしくない、と言います。なので、仮面ライダーとは干渉しない。無視する。という手管に出ると言うのです。

 この辺、かなりクレーバーです。平成仮面ライダーシリーズが色んなテクでどうしてライダーと戦うのか、を語ってきた中で、基本的に干渉しない。それが仲間になるかもだったドーパントがやられそうでも、というのだからクレーバー以外の言葉が出ません。

 そして、それが他ならぬハイドープだから可能なのです。色々と事件を起こして尻尾をつかまれる、あるいは仮面ライダー憎しで手を出してしまうのが昭和では良くあることでしたが、これは他がハイドープ程隠密性が高くなかったからです。なにせハイドープには裏風都があります。これには、翔太郎たちは手出しが出来ません。唯一、ときめさんが裏風都に行けるのですが、それで彼女だけに任せるには危険すぎます。なので、仮面ライダー側からは相手を探る事が出来ないのです。なので、ハイドープは仮面ライダーを無視する、という選択肢が使えるのです。一応、様子は監視している模様ですが、それも転ばぬ先の杖といったところです。こうなると捕まえたやつを吐かせるくらいしかないのですが、これはオーロラドーパントの力での粛清やハイドープの夢に魅せられ過ぎて全く言わないなど、どうにも上手くいってないのが現状です。確かに、1億ぽんとくれたりするから、そりゃねえ。

 さておき。

 こうなってくると、裏風都に行くしか手がないんですが、そこがときめさんと関係してきます。彼女はハイドープを知っていて、裏風都に行けて、というのでかなりハイドープと近しい人だったのは間違いなそうで、更に今回、前にときめさんが持っていた壊れたガイアメモリがジョーカーメモリ、という事が判明します。更にこの巻最後のコマで万灯が意味深なことを言っている時に見ているのもジョーカーメモリ。ここで、ジョーカーメモリがなにがしかの、今までの只のメモリ以上のものがあるのが見えてきました。それをもって更にときめさんが重要になってきます。果たして、この後はどうなっていくのか。気になりますね?

 とかなんとか。