感想 楯山ヒロコ 『週末親子』1巻


週末親子 1巻 (まんがタイムコミックス)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

大体の内容「週末だけの親子関係」。「お父さん! お母さんと結婚してください!」の裏表紙の文句がぱっと見で、え? は? ってなりますが、読んでいけば成程、分かる。と分かりみが発生する、楯山ヒロコエモーショナル漫画。それが『週末親子』なのです。
まず軽く状勢を整理しますとしがないゴシップ記者、三島ケンスケのもとに、ある日突然己の娘と名乗る森富ユカちゃんがやってくるところから話は始まりません。いきなりユカちゃんがケンスケさんを襲う(妖怪お父さん起こし)するところから、話はスタートします。そして、週末親子関係がどういうものか、というのをさらっとやって一話が終わります。タツジン! と唸ってしまう見事な一話です。
状勢の話ですね。とりあえず、ユカちゃんはサユリさんという、ケンスケさんの高校時代の彼女の娘。二人は突如別れる形になったのですが、どうやらその前段階でケンスケさんがユカちゃんを仕込んでいた模様。そのせいで別れたのか、それ以外の問題があったのか。とにかくそれは分かりませんが、ケンスケさんのところにユカちゃんを送ることに対して許容している、後自分の親には秘密にしている、それらの点からして、憎からず思っているように思われます。でなければユカちゃんも、お母さんと結婚してください! とは言わないだろうとも思いますけれど。
さておき。
そんな関係性であるこの漫画。しかし作者は楯山ヒロコ。キャラパワーで押してくる場面の多い漫画家さんです。が、そのパワーはこの『週末親子』では弱めです。とはいえ一般のメーターからすると上の下というレベル。つまり十分に高いのですが、今までの漫画がキャラパワーで押しに押してくるタイプだっただけに、このパワーが弱い感じに若干戸惑いました。
ですが、その代わりにエモーショナルというか、感情のうねりの強さを感じます。短編でのそれというか、短編集『あい言葉は、愛』で横溢していた、様々な感情のうねりを、この漫画は陽性な方向に強く押し出しています。単純ではない関係のユカちゃんとケンスケさん。でも、じんわりと親子している。この感覚というのが、大変エモーショナルなのです。
さておき。
パワーは弱い、と言いましたが、同時に一般からすると十分に高いとも言いました。特にユカちゃんのパワーの高さが、楯山ヒロコヒロインらしい部分と、まだ未熟である部分とが絡み合って、新たな境地を生み出しています。楯山ヒロコせんせの子供キャラって、よく考えるとそんなに数出てないな、というので、そりゃ新たな境地になるわ。と納得したりも。とはいえ、小学五年生らしさとらしくなさが同居した、ユカちゃんという人間性は大変良いものだなあ、と。子供からすると簡単なことにみえる、ケンスケさんとサユリさんとの結婚が、そんな単純なものじゃないというのがありつつ、でも簡単なことなのでは? とユカちゃんの言動を見て思ってしまう。そんなパワーに満ちているのがユカちゃんなのです。この後、この子とケンスケさんたちはどうなっていくのか。大変見どころがある漫画、そんな風に思ったりするのでした。
とかなんとか。