感想 真田一輝 『ワインガールズ』1巻


ワインガールズ 1 (マイクロマガジン・コミックス)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

大体の内容「ワインの、擬人化!」。正確を期するならば、ワイン用ブドウ品種の擬人化であります。擬人化というか女の子化であります。そしてワイン用ブドウは組み合わせ、敢えて言えばカップリングするものもある。そしてこの漫画の作者は真田一輝先生である。後は分かるな? というのが、『ワインガールズ』なのです。
後が分からなかった方の為に後述しますと、真田一輝先生はその昔(そう昔でもないんだけど)まんがタイムきららMAX誌で、MAXと言えば百合、というレベルにまでMAXを叩きあげる、その一翼を担った方です。つまり、ワイン品種擬人化百合、という高高度のネタがをそつなく、しかし漏れなくやっていく漫画の、『ワインガールズ』なのです。これが如何に人外魔境を超え、天外魔境のレベルになっているか。それについて、この項にて語っていきたいと思います。
そも、ワイン用のブドウ品種ってどれくらいあるの? というのはググれ。ですが、とりあえず5000品種超あるそうです。当然、これら全てを擬人化していくのは正気の沙汰ではありません。ですが、いずれするのでは? という畏れも持ってしまうのが、真田一輝先生の凄みでしょう。1巻でひとまず20人、つまり20品種登場しています。このペースで行くと250巻くらいで制覇出来ますね、猿渡さん! と若干狂った顔をしてしまいますが、それは冗談にしても、1巻の段階で既に20人、キャラが出ているという時点でこの漫画のハイペースっぷりに驚愕します。キャラが多い漫画は多々ありますが、1巻でこのペースは中々類を見ないですよ。その弊害、ちょっと誰が誰か分かりにくくなってしまっている、はあるんですが、それでもこれは誰? と質問されない限りは、つまり漫画を読んでいる内は混乱はないのです。その辺は多キャラ漫画を描いていたスキルというのが、例えば4コマ1本内であまりたくさんキャラを出し過ぎないとか個性の部分をしっかり作るとか、見てとれるものとなっており、ある意味達人! の域です。
そのキャラの読み分けにも関連してくるのが、そのキャラクター性。実際のブドウ品種の扱われ方、歴史、出来上がるワインの諸々、使われる製法などをキャラクターとして落とし込む、という言っている意味は分かるんだけどお前何言っているんだ? と、ミルコ・クロコップ画像になってしまう方もおられそうな御業が繰り出されます。冗談のような感じですが、実際にそういう形、例えばセミヨン種は単体では個性が弱いが貴腐ワインとすると光るものがある、というのを加味して、磨けば光る珠、なんだけど光り方がおかしいぞ? というキャラ付けしたりしているのです。どういうテクだよ、と神妙な顔にならざるを得ません。
このブドウ品種の関連は、相性がいいブドウ同士、という部分も使われており、つまりカップリング部分はそこを重視していまして、関係によるキャラクター性もそこから立ち上がっています。多方面に相性がいいと矢印が増えるというのもまた、その部分を濃くしています。正直よくこんな無茶な内容が違和感なくやれているな、とヅラが脱げ落ちそうなくらい脱帽してしまいます。カップリングの話だと個人的には日向なソーヴィニョン・ブランさんと影だったのが徐々に変態性を増していくセイヨンさんのカップリングがすげえ好きなんですが、どうしたらいいんでしょうか。←どうもしない
さておき。
この漫画はそういう萌えキャラ漫画な訳ですが、うんちく漫画としての性能も隠し持っています。先に書いたように、ブドウ品種の様々な部分をキャラクター性としている部分も嫌味なくうんちくを持ってくる匠の技なんですが、4コマの一本分の下にある解説もネタとしても解説としても大変レベルが高く、ワインに対してあまり知識がなくても、漫画の方と解説の方の合わせ技で、あ、理解可能。となるという、地味にうんちく漫画としても高いレベルだったりするのです。それでいて、嫌味なところは皆無。なんとなく理解でも特に問題なく、覚えて帰ってくださいね! というのではないのもまたいい所と言えましょう。ヅラだけじゃなく地毛すら脱毛してしまうレベルを感じさせます。うんちく漫画、かくあるべき。とは言い過ぎですが、萌えキャラ漫画でうんちくをする、という部分の一つの頂である、とは言ってしまえる作品となっています。何故これをきららではなく……。芳文社……。
というのはさておき、今回はここまでと、〆させていただきます。