感想 わだぺん。 『ミミヨリハルモニア』1巻


ミミヨリハルモニア 1巻 (ガムコミックスプラス)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

大体の内容「二人が紡ぐ、耳<寄り>なお話」。ぶっちゃけ1巻範囲内では音々さんと響嬢以外に名前付きの人は出てこないんで、そりゃ二人が紡ぐしかないわ! というのが、『ミミヨリハルモニア』なのです。
このお話は、木乃下音々さんが北条響さんに(匿名でだけど)呼び出され、迂闊にヘッドフォンを使う事から始まります。そのヘッドフォンにより、今まで出会ったことのない音楽体験をする音々さん。そこに間髪入れず響嬢が、いいでしょう? と詰め寄り、九割方強引にヘッドフォンの同士として音々さんを引き込んでいく、というのが大体の筋になります。そこまでならニッチ需要を満たす萌え漫画であるなあで済む、いや済まないから後でもうちょっと書きますが、とにかく済むんですよ。でも、この漫画は音々さんの異端のヘッドフォン感受性がかなりのウェイトを占めているのです。
ヘッドフォン感受性とは、何か。それはヘッドフォンから聞こえてくる音に対して、凄まじい体感を持つことです。もっと簡単に、あるいは難しく言うと、味皇ヘッドフォン版です。この言葉で本当に大体の説明が出来てしまうくらい、音々さんヘッドフォンへの高い感受性を持っているのです。でも、それはそれで大変頭がおかしいというか、どんな感受性の豊かさ何だよ! というものでもあります。音が突き刺さる感じとかを受けたり、あるいは音に包まれてエロいとか言い出したりします。高すぎるのも考え物だな、という部分でありますよ。
というか、今まで良くこれ発動しなかったな、というべきでしょうか。あだ名おもいっきりつけられるネタですよね。でも、だからこそ響嬢にその才を見出されたのでもあります。この辺、何故響嬢が音々さんのこのヘッドフォン感受性の高さを有しているのかを知っていたのか、というのが謎としてあるんですが、1巻範囲内ではこの感受性だからこそ選んだんだ、という程度しか明かされず、まるっと謎のままです。いつか明かされる日が来るのだろうか。という点に対しては、まあなくても覚悟しています。それだけニッチな漫画なのです。
とはいえ、そのニッチさを満たす萌え漫画というには、この漫画はとうがたっています。先に書いた音々さんのヘッドフォン感受性を発揮する場面もそうですが、響嬢のヘッドフォンにかける情熱と知識もちょっと度が過ぎています。部を勝手に設立して、その中に音々さんを引き込んで、沼にはめるという所業がそれです。そこまでするのか! というレベルであり、でも音々さんだからこそ、とか言っている辺りが本当に百合ですなあ、と思いつつでもやり過ぎなのでは、とも思わされるところです。それよりも、部を作って何をしたいのか、と言う部分が今一判然としないところが怖いです。これは何かの仕込みで、もっと大きなゲインがどこかにあるのか? という慄きがあったり。それくらい、わりと無茶する感じなのが響嬢なのです。何か、やはりあるのではないか。邪推権ここに極まれり。
また、ヘッドフォン開発秘話みたいなのもとんがっているのが、この漫画をただのうんちく漫画で終わらせないものとしています。ヘッドフォン擬人化からの改造話とか、ちょっとヤバい道に入りかけで、「おいおい」「死ぬわアイツ」ってなるくらいでしたし、製作陣がアメリカに移ってこれじゃない! 私たちで作るんだ! って言ってるのがぺたんな子だったりします。史実を魔改造しているこの感じ、嫌いじゃないわ! とも言えますが、誰かから突っ込まれたら裁判で負けそうな案件でもあります。こんな辺鄙な漫画にそういう面構えで迫るひとがいるのかどうかという気もしますが。
さておき。
ヘッドフォンうんちく、その実部分に対しては、わりとしっかりとしたものがあるかと思います。監修があるので基本的なヘッドフォン知識をきっちりと幹として込めつつ、でも枝葉はわだぺん。せんせのセンスで味付けされて、なので大変変なバランスですが、それでもきちりとヘッドフォン漫画という謎の分野を開拓している感じであります。今後このような漫画が再び現れるかと言うと微妙なところなので、この一期一会を大事にしたい。そう思う吉宗であった。