感想 小林めぐみ 『片手間ヒロイズム』

片手間ヒロイズム (一迅社文庫 こ 1-1)

片手間ヒロイズム (一迅社文庫 こ 1-1)

 内容を要約すると「一冊完結型の『食卓にビールを』風味」。この形式(女子一人称)でいく限り、この言葉が出るのは致し方ないくらい、あれは人口に膾炙したものですから。しょうがないんだよ……、切り替えられなくても……。
 で、どうしても、ノリがそっちの方に感じてしまうのは当然語り口がビール文体だからなのですが、そのせいなのかやたらノリきれずに、というか頭に響く声がずっと声が「ビール」の方の人の声で、それがちょっとキャラと違う為にしばらく往生しながら読みました。そしたら、どんどん声が慣れてきたというか、キャラにあわせてくれて、気がついたら楽しく読みきれました。声の方も、「ビール」の方のと同じ声優さんが違う演技を、という形に落ち着きました。良かった良かった。
 話自体は最初は「ビール」ノリのしゃくたん風味、後半からそれにどうめぐりまぐらみな内容が加わるものなんですが、どうめぐりまぐらみ部分もいつもの通りのこばめぐノリなのでまぐらみ風に混乱するよりは、なんだかなんだか、な事態をさらっと済ましてしまいます。一冊完結ならこういうのでいいよな、とは納得。短い内容にきっちりまとめたのを楽しむべきでしょう。一話一話の内容なら吸血鬼が普通に出てきて普通に退場した「密室で殺人事件を推理」が無茶と言うか。相変わらずだな、小林めぐみ、と納得の内容でした。推理? なにそれ? みたいな。
 さておき、赤ん坊が出てきた、というのはやはり赤ん坊を出したかったのかしらん。興味深いものだったのかしらん。お幸せそうである。とか、勝手に幻視して楽しむのでありました。