感想 せがわまさき 『山風短 3』

山風短(3)青春探偵団 (KCデラックス)

山風短(3)青春探偵団 (KCデラックス)

 大体の内容。「青春探偵団、大活躍の巻」。『山風短』を時代小説限定だと思っていたか? 甘ぇ! というつもりだったのかどうかは定かではありませんが、とにかくこの巻は今までの時代小説物から一転どころか二転三転、昭和の青春物となりました。最初に本屋で見かけた時はアイエッ!? ナンデ!? 青春物ナンデ!? と一瞬ショック状態になりましたが、ここであえてこの作品を持ってくるというのは何かしら深遠な御意志がおありなんだろう、という変な信頼感すら湧いてきまして、そのまま勢い良く買ったのを昨日の事のように思い出されます。ごめん、思い出されますって使いたかっただけで、実際はそこまで詳しく覚えてない!
 さておき。
 内容の方は高校生男女六人が出かけた海で起こる一騒動、で大体片のつく話で、この話の秘密部分は大体初手から見切れるものだったりしまが、それでも読ませるんだから流石の山風せがわデュオ。そこに至る過程をじっくりしつつ、高校生の活躍をしっかり見せる話に。そしてそれだけ分かりやすい話なのに最後のあわいは色々考えさせるんだから、やっぱり流石。短編としての筋、そして話の肝が分かりやすいからこそ、最後の高城女史の気持ちに対してもやっとさせられる。このバランス感覚が素晴らしいと思いました。
 さておき。
 この漫画をキャラ物的、あるいはライトノベル的に見ると主役六人という大所帯を見事にまとめるテク\すげえ/、といえましょう。活躍という面では男性陣が強いんですが、存在感として女性陣も負けてはいない。いないとしっくり来ないだろう、というのが試しに一人減らして機能するか、という思考実験してみれば実際良く分かるんですよ。誰が一人欠けても上手く回らない。なんともしっくりくる六人だったり。特に漫画は画面に出てくる所で色々と主張してくるので、それが顕著だったりします。というか、漫画になったゆえに存在感が出てるのも何人かいそうです。原作読んでないので勘でしかないですが、なんとなくそう思って見たり。
 というか、せがわまさき漫画でこんなに表情が活き活きと漫画漫画するのって珍しいような。せがわまさき処女作である『鬼斬り十蔵』でもその他の作でも活き活きはあっても漫画漫画しいのはそんなになかったよなあ、とか思い出してみたり。基本リアル系志向なのがせがわまさき漫画でありますから、こんなに珍妙な顔がたくさん出てくるというのは結構吃驚。描けるんだー、と言った方がしっくりくる感情が浮かんできました。
 そういう漫画漫画した顔が、しかしこの高校生達には栄える。話自体もシリアス過ぎない、ってまあシリアスではあるんですが、過程は結構コミカル、なのでそういうコミカルな部分が入っても全く問題ないのも影響しているのでしょう。ちゃんと動きやシリアスな所ではちゃんとするのも相まって、コミカル部分がより活きる形になっているのも、でしょうか。いやあ、いいなあ、こういうのも。