感想 七葉なば 『となりの魔法少女』1巻

となりの魔法少女 (1) (まんがタイムKRコミックス)

となりの魔法少女 (1) (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容「それは三人の物語」。あるところに、魔法の使える少女がいました。その少女は魔法で色々出来るのですが、過去にそのせいで手痛いしっぺ返しを食らってしまい、友達を作る事に恐怖を持つようになってしまいました。そのまま時は流れ、少女が高校二年になりました。そこで偶然出会った普通の少女とちょっと理屈っぽい少女の二人に、少女の秘密がバレそうになり、そしてこの漫画は始まります。魔法少女と理屈少女と普通少女のアンサンブル。それが『となりの魔法少女』なのです。
 魔法少女、と言われて煌びやかな世界を思ったり、あるいは陰惨な世界を思ったりと、人それぞれに固定概念としての魔法少女という物が存在しているかと思いますが、この漫画の魔法少女、あきさんはどちらかと言わなくてもリアルな、本当に等身大の少女に魔法の力が備わっている、というタイプです。煌びやかでもなければ、陰惨でもない。あくまで普通の、控えめな女の子に、しかし魔法の力が備わっている。そういうタイプであります。その魔法少女に、上記のように理屈少女のウサさんと、普通少女のけぇさんが出会ってからの話が、この漫画なのです。しかし、あくまで普通の中に魔法の力が入れられているので、当然のように明確な敵なんていませんし、解決すべき事件もありません。そこにあるのは、ただ自分の力に悩む魔法少女と、色々訳ありの理屈少女、そしてあくまで普通の普通少女との係わり合いだけなのです。
 それだけだというのに、どうにかなるのか? という疑問符は、連載速度が遅い(まんがタイムきららミラク誌で隔月連載)という点を加味しても、これがしっかりどうにかなっているのです。最初はあきさんの秘密にウサさんとけぇさんが肉薄していく、という呈でしたが、すぐに、二話目であきさんが魔法少女であるというのが理解されてしまいます。それで、どうなっていく? と思えば、理屈少女のウサさんがあきさんに対して大層な危惧を持ったり、友達付き合いの為に魔法を使ってしまったあきさんの、その魔法とは? という話になったり、科学対魔法かと思ったらウサさんの家庭の事情に肉薄したりと、手を変え品を変えで話は進んでいきます。簡単にキャッキャウフフになると思ったか? 甘ぇ! という面構え。というか、この漫画でキャキャウフフは今後も来ないであろう、とは、読んでいて思ったりも。つまり、そういう方向性の漫画じゃないんですね。あくまで三人の狭い中での、仲良くなっていく話なのであり、百合とかそういう方向の話じゃなく、友情の話なのです。だから、時折状況が険悪な方に向かったりもします。ウサさんの家庭の事情にあきさんが不用意に入り込んでしまって、とか。しかし、そこを乗り越えていく、あるいは普通少女の面目躍如する事によって、三人の仲は、強固な物になっていくのです。つまり、そういう話なんですね。
 にしても、普通少女であるけぇさんの存在感、というのが結構素晴らしい。普通、普通キャラというのは周りの異端によって食いつぶされてしまう存在だったりするのが漫画における、いや人生における常なのですが、けぇさんはそんな事が全く無い。ともすれば暴走しがちな理屈少女を軌道修正したり、あるいは引っ込みがちな魔法少女を引っ張っていく。普通だからこそ、どちらにも極度に肩入れせず、あくまで普通に接する。あるいは、それもまた特異な“普通”かもしれませんが、でも、やっぱりこれを表するには“普通”としか言いようがない。そんな普通少女がいるから、この漫画は回っていくんですね。
 真面目なしゃっ面はここまでにして、ウサさんについて語りたいんですが構いませんねッ!!←突然のマジかなぐり捨て
 ウサさんは、この漫画においては理屈面、科学面の存在としていらっしゃいますが、基本的にマッドサイエンティスト気質なのもあって、魔法にやや対抗意識と知識欲があったりします。それゆえに、魔法について否定的か、というとかなり信じているんですよ。それはある、という態度で、だからこそ、家庭の事情に魔法が絡もうとしたら怒りをもってしまっていたりするわけですが、そういう事象についてに対して色々と燃えるウサさんがいいんですよ。あきさんが引っ込み型なので、押していくタイプとしているから、というのもあるんですけれども、でもやっぱりアクティブに動く人というのはいいですよね……。本当に光り輝いておられます。個人的ベストショットはこの巻P53のなんとも言えない、でもいい顔の場所と、普段着のオーバーオール姿が見れるP66〜P74にかけてでしょうか。実際問題、かなり体つきは女性らしいのに、ああいう顔とかオーバーオールとかで、ちょっと女の子っぽくないのが、たまらなくツボだったりします。ああ、いいわあ……。
 とかなんとか。