感想 OYSTER 『シネマちっくキネ子さん』1巻

 大体の内容「キネ子さんが撮る!」。何気に不運な男大八の前に現れた少女、キネ子さん。彼女は大八で映画を撮ると言いだして……。そんな導入から、いつの間にか大八が撮る方へと回ってる感があるけどどうなるでしょうか、というのが『シネマちっくキネ子さん』のストーリー的な部分での話なのです。
 さておき。
 OYSTERてんてーの漫画ですので、ストーリー的な部分も然る事ながら、というかむしろギャグの部分の方がメインにみていくのがこの漫画での戦い方でしょうが、それでもストーリー面についてまずいきますと、先に書いたとおり、大八の映画を撮る、という話が微妙にずれてどんな映画でもとりあえず撮る、という話になっている感があります。この辺はやっぱりドキュメンタリーを撮るという方向ではないっぽいのが原因でしょうか。確かに、大八は不幸な男ですが、それでは間が持たないだろうしなあ。という気もします。後から映画向きのキャラクターが追加される辺りも、キネ子さんのキャラを以てしても大八メインでは回らないってことなのかも。そういう意味ではキャラクターがとっちらかってると感じる部分もあるのも、むべなるかな。とはいえ、大八とキネ子さんがどうなるのか、というのはメインストーリー面でもラブ面でも気にはなる辺りが美味い。キネ子さんも大八もどっちもその辺疎い感じなので、これは実が結ぶかどうか全く不明です。でも、そっちの目配せもあるのよ、というのが広くなっているのは大きいです。それがギャグ面と相乗効果している部分もあり、この漫画の裾野を広げています。まあ、その分やっぱりとっちらかってると見える部分もありますが。
 さておき。
 ギャグ面はやはりOYSTERてんてーの持ち味であるテンポの鋭さはこの漫画でも健在。4コマ漫画のテンポというのを熟知しているが故に出来る鋭さで、この辺は大変な匠の技というのが見れていると感じます。所謂起承転結という基本のリズムがしっかりとしているから、たまにずれたテンポを見せてくるとそれが綺麗に決まり、それがあるから更に基本のリズムが鋭さを増す。まさに4コマ界の奇才の名に恥じない仕事です。個人的には温泉回とウェスタン回二回がマストであります。温泉回はラブ的な部分の起きそうで起きない部分とギャグのノリがいい感じになっており、ウェスタン回は特にギャグのノリが良くて且つOYSTER味のテンポを魅せてくれる回です。これらの回が見れただけでも買った甲斐があろうものです。いや、良い漫画ですけどね!?
 さておき。
 キャラクターの面で見るとキネ子さんは大変いいんですが、それよりも大八のがいい素材。貧乏ネタをぶっこめるキャラクターとしてあるがゆえに、貧乏ネタがそこかしこに。特に食の面では多く、具無しお好み焼きはそれ単なる小麦粉焼きやないか! というので笑わせていただきました。ついでにキネ子さんとラブる可能性があるのも大八で、キネ子さんが撮る対象も一応大八なので、こいつが今後どうなるか、と言う面が大変気がかりです。貧乏ネタを乱舞させるキャラを撮る、って無茶な気もするなあ。
 とかなんとか。