感想 北村游児 『いこいのそどむ』1巻

 大体の内容「俺の周りの人がヤバイ!」。普通の高校生、友谷猛に集まってくる人は、ちょっとどこかおかしくて、というよくある設定だけど、おかしくての質がおかしい、それが『いこいのそどむ』なのです。
 作者の前作にあたる『美少女いんぱら!』からあの伊勢谷緋華が先生として登板、メインを張る。という文字列だけで分かる人には「ああ……」という遠い目をなさるでしょうが、大体その想像通り、隙あればM気質を全開にするある意味いつもの伊勢谷ワールドが繰り広げられます。
 しかし、今回の標的は一応今回も登場する前作の弾馬先生ではなく、上記している友谷猛という男子高校生。友谷、と言う事で前作知ってる人なら、てぃん、とくるでしょうが、そうです、前作メイン格である所の友谷蒼さんの弟です。前作の段階で弟なんて一回も出てないじゃないか! という点に関しては、最近になって知ったという便利な言葉が我々の切り札。うっちゃり方が絶妙ですね?
 そして、何故その猛君が標的に、というのも簡単にうっちゃられます。弾馬先生が、「こいつは素質がある。お前でその才能を開花させてみろ」と、伊勢谷さんに吹き込んだから、と。そんな簡単に今まで相当の粘着質で弾馬先生に張り付いてたのが、とも思うんですが、とにかくそれで猛君は狙われるというかご主人様扱いになります。これによって『美少女いんぱら!』と違って、生徒が先生にから、先生が生徒にとなっていて、ゆえに趣きを異にしています。しかも相手は男子高校生。当然性欲がハッスルする時期。それに対して、大人の女性がM行為。なので場面場面でエロい事もあり、それゆえに猛君が鼻血出したり赤面したりながらつっこみやいなしをするのが、前作との大きな違いとして立ち上がってきます、が、伊勢谷さんの行為度合いは前作のそれとほとんど変わっておらずでありまして、なので慣れてくると落ち着きさえする伝統的伊勢谷行動なのであります。というか、前作でいい加減ネタ尽きたんじゃないか、と思っていた伊勢谷さんのM行動がまだまだ引き出しがあるぞ? って面で繰り広げられる様は安心と共に圧巻でもあります。
 さておき。
 この漫画は通常の倫理観から逸脱した人達がわちゃわちゃする物なのですが、それを表す部分は結構的確に、しかしくどくならずに、というやり口で魅せてくれます。これはこの漫画が4コマ漫画である、という部分に根差した所が多いがゆえと考えるのが妥当でしょう。コマの大きさは一定且つ小さく、また一繋がりが4コマと少ないがゆえに魅せ方を工夫する必要があるからこそ鍛え上げられた技の冴えが、そこにあります。ついでにこいつやばい!を瞬時に魅せる様もこの漫画特有の力としてあげられるかもしれません。その一例。

 この二コマですぐに、

  1. 右の人が男である
  2. 右の人が女装をしている
  3. 右の人の学校なのに将軍がおなりになっている
  4. 右の人のおなり具合から将軍が大将軍である

 が理解出来、且つこいつやばい! と分かるというまさに達人的なやり口であります。こういう、瞬間的にやばい感じを与えるのに元から長けていたのは『美少女いんぱら!』時代から感じていましたが、それがこのように匠の域に達してきているのは、ファンとしては嬉しい限りです。これで連載の方が減ページでされているというのが切ないですが、それだけ生み出す力がいると考えて切なさを抑えたい所です。
 さておき。
 キャラクターの話でも。猛君は今の所普通人、もっとも読者側に近しい性質だと書けば終わりなので飛ばしまして、まず伊勢谷さんから。


伊勢谷緋華

 猛君の学校の先生。同作者の前作と言える『美少女いんぱら!』から引き続きの登場。強度のM気質で尽くすタイプだけど尽くすの意味が違う人。猛君を主人として覚醒させるという想いよりも、自分のM気質を発散したいという欲望のが強い感がある。『美少女いんぱら!』では解決しなかったその辺がしっかりと決着させられるかどうかですが、どうなるかなあ。


次原秋

 猛君のクラスメート。『美少女いんぱら!』登場の次原さんの弟(異母弟?)。次原家は淫業の強い家系ですが、その例にもれず、性欲が強く、老若男女を問わず、という凄い食い散らかし方をする。女装しているのはそうしないと性欲が強過ぎて抑えられないから、という「何言ってんだ! ふざけるな!」な理由。でも実際に男子制服の時は終始隠れ大将軍だったのであれで本当に抑えられているらしい。


カチヤ・アルムフォルト

 猛君のクラスメート。血筋はドイツだが基本的に日本育ちらしい。猛君が好きで、その全てを、というタイプだが、その為には手段を選ばない性質。猛君のならどんな顔でもいけるし、どんな匂いでもいけるタイプ。後、寝盗られたいという性癖もある。とはいえ、そこらを除くとほとんど残らないけど実際女の子な部分もない訳ではない。そのちょっとが、偶に出ると一服の清涼剤です。本当にありがとうございます。


葛川瀬菜

 猛君のクラスメート。虚言癖系。妙に金に浅ましいけど何かあるのかは不明。巻の後半で登場だが、大体クズ行動をするので結構不快に感じるキャラクター。でも、大体天罰てきめんなので、そこはバランス取ってるなあ、とか。何故か伊勢谷さんに嫌われている節がある。単に先生だから厳しい、というのとは何か違う感じも。何かあるのかなあ。
 
 キャラクター面で言うと個人的にアルムフォルトさんが結構いいなあ、と。好き過ぎるからの行動、というのはこの漫画の変態づくしの中ですっごく爽やかな存在ですし。まあ、その面は本当に偶にで、大体はちょっと変態過ぎんよぉですけれども。こういう登場人物が変態な部分を出してくるのが、この漫画、と言えると思います。集英社のサイトで試し読み出来る1話目で大体の雰囲気は分かると思うので、気になる方は調べて行ってみる事をお勧めします。
 とかなんとか。