感想 山東ユカ 『ロボ娘のアーキテクチャ』3巻

 大体の内容「まあ、単機九億をペイ出来る場合ってあんまりないですよね」。あったとしてもアラブの石油王レベルの財力前提だからどう考えても。量産化によって値段が下がるってあれも期待できるのかこれ。という一応科学技術的には大変な物なんだけど、おもちゃとしてはどう考えてもスケールがおかしいクォークと江草家の毎日。それが『ロボ娘アーキテクチャ』の基本なのです。
 今回も特にこれといってする事と言えば性能テスト程度で、それも遊びと混ぜ込みつつでテストはテストなんだけど真剣味は足りない感じのいつものこの漫画のノリです。基本的に噛み合わないような噛み合っているようなの無機物と有機物のコミュニケーションがこの漫画の肝ですが、それは今回も変わりなく。イチ姉となゆたさんでもずれがあるけど、クォークとなゆたさんとはもっとずれがあって、そこがいいんですよ。とはいえ、最近は噛み合ってる感じなんですよね、その辺り。どうも会話のデータが蓄積されてるからなのか、徐々にですが自分で考えて喋ってないか? という、反応以上の言語性能になっている節も。この巻だと後半で地味にそこでそういう言葉が出るのって自律で考えてないか? というのがあります。この辺、ネタ的に処理はされてるんですが、でもネタと処すにはしっかりとした意思と言うか、ちゃんと状況を見て考えて台詞が出ている、その中には確かに普通の人が言うなら自然ではある若干disってる感じを、でもクォークが言うってのがあって、それがこの漫画はどういう到達点に向かっていくのか、と言うのに対する一つの示唆があるように見えました。会話のデータが溜まりまくって自律した意思みたいなのが芽生え始めているのかなあ、って無茶な事ですけど、でもそう見えるし、そこに行くのかどうか。そこまで行ったら、九億なんて安いなんてもんじゃない気がしますよ。
 さておき。
 皆大好きレプトンと奥泉さんですが、今巻のレプトンと奥泉さんはわりと普通と言うか、平常運転でした。奥泉さんの卑屈が裏返ってポジティブにしか見えないという特殊スキルは今回は特に発動してなかったのが、個人的には惜しいなあ、と。まあ、ライバル会社に乗り込んでイチ姉にご指導ご鞭撻を! って言ってる横でレプトンに酷い台詞吐かれてましたけど。ライバル会社に乗り込むのに特にその意味を考えてない辺りの常識の無さ加減も奥泉さんの魅力というか反面教師事案なんだよなあ。ひなまつりも酷い事になって危うくレプトンがそのダメさ加減をインプットしかけるという事案も発生してたし。なゆたの「ダ、ダメッ!」は読者の皆の言葉でした。次巻以降、レプトンもどうなるんでしょうねえ。女王様スタイルが身に付き過ぎてる感あるけど、それは大丈夫なのかなあ。おもちゃじゃ絶対ないんだけど。
 江草家の方の話もすると、地味になゆたさんが学年が上がっていってるのは、時間がくるくる同じ所をというのを止めたメルクマールとして機能してますが、そうなるとイチ姉の年齢も上昇して行く訳で、アラサ―からサーティになってしまうんですが大丈夫なのか。本人的に焦りはあるのか、合コン結構行ってるみたいだったりしますが、あんたみたいな特殊な人が合コンでどうにかなる訳ないだろ、いい加減諦めろ! という言葉がするっと出てしまいます。とはいえ、周りの男性も、マイペース過ぎる管さんと不倶戴天の敵の浅生木さんと卑屈過ぎ奥泉さんしかいないので、それは確かに合コンに行くわな、とも。でも、やっぱり無理だよ、イチ姉……。
 そんな気分になりつつ、この項を閉じたいと思います。
 とかなんとか。