感想 島本和彦 『アオイホノオ』12巻

 大体の内容「焔が、砕けて……」。前巻で砕けていく端緒はありましたが、その砕け方はこの巻の方が強い、そんな『アオイホノオ』12巻なのです。
 前の巻でめくるめく挫折体験を、とか感想書きましたが、この巻で更に挫折体験が濃厚となってしまっていました。それもSF大会の映像の詳しい見所を、俺が使いたかったのに! という挫折含みで解説王波紋疾走してくるのみならず、SA社編集さんのあえてベタに! のベタの意味を履き違えて折角の愛の鞭を履き違えてしまったり、少年サンデーにも送ってみたけど名前から前に来たやつか合わねえよで切り捨てられたりと、本人が気付かない所で地味に、しかし致命的に挫折しておるので、挫折体験さえさせてもらえない挫折というものを見せつけられます。もう止めて! 焔のライフはゼロよ! という状況になっております。これからどうなるのか。名前変わってたら未来は変わっていたのか? というエクスキューズが一体この漫画にどういう影響を及ぼすのか。島本和彦自伝めいていた所から、地味に変わってしまうのか。実際は名前を変えて送ったが、ここでは違うということなのか、それとも実際はこの展開通りなのか。というかどうなるんだろう。デビュー出来て今がある方向性というのが分からなくなってきたせいで、このまま頓死すらいくのか、という恐怖すらあります。最初の頃からこの漫画には用心せい! という立ち場でしたが、それが更に一段ギアが上がった感じです。本当にどうなるんだろうか。とにかくコワイ!
 今回の焔の上から目線は高橋留美子の『うる星やつら』のアニメ化に対してのものが濃い。サンデーのアニメ化はしょっぱい! も相当ですが、こっちには、俺には動きがあるんだ! という謎の自負も素晴らしいです。そして、それが打ち砕かれる可能性を示唆されてパニックになるのも素晴らしい。先のSF大会映像の奪われ体験が尾を引いてるのが良く見てとれて、そこがまたいいのです。フフ、壊れかけてるな……。という謎目線が出ようものです。アニメで気づかないうちに何とかしなくては……、とか言ってたのもあるから、余計にいいです。フフ、フフフ……。←ホントなんなのその視線
 にしても、焔の女性関係って変な事になる場合が多過ぎるのはどういう事なのか。トン子さんとはくっついてないけど別れても別にいいっぽい発言があったり、初見のますみさんの瞳の魔力に酔いしれたり、と浮沈が激しいです。この辺りもどうなっていくやら。どんどんと事態が変転していってるけど、基本的な部分はまだまだなアオイ時代らしい雰囲気ではありますけれども、でも頓死したりしないよなあ。コワイ!