感想 中村哲也 『バニー坂 中村哲也作品集』


中村哲也作品集 バニー坂
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「バニーか自転車か。それが問題だ」。表紙の段階でバニーと自転車、というこの漫画の二輪がきっちり提示されているけど、バニーと自転車の混交は表紙だけなので注意だ! それが『バニー坂』なのです。
 この漫画の内容量の四割がバニーで四割が自転車です。残り二割も大変いいのですが、ここはまず二党のやつからいいのをピックアップ! していきたいと思います。
 まずバニーでのワタクシの好みは、その10『バニー刑事』。刑事と書いてデカであります。とはいえ、刑事要素がどこにあったのか全く不明な辺りが素晴らしいです。普通付けたら何かしら関連つけようとするのに、しない! その良く分からない割りきり! 全体的にバニー刑事の強さが理不尽なのも良い所。ガチャガチャとしたバニー押しの中でこの無理やりさは一種の清涼感というか、やりたいんやな……。というのを理解出来て大変感慨深いものがありました。特にバニーエクディスィスの理屈の理屈になってない所とかもう堪りませんです。ただの勢いのみ! でも、嫌いじゃない。
 自転車の話ではその7『坂がちガールズ』がよいものです。自転車の種類で対立する二人の女子学生が、勝負! というお話。単純そうな自転車レースになるかと思いきや、色々と起伏のある内容でありました。休憩入れたり、坂登ったり、西瓜食ったり、ショートカットしたり、力づくで先行したり、海に落ちたり。そういうので最後のオチの青春やなー、というのが大変ようござんした。大オチは、ですよね。海に浸かったらそうしないといけないですよね。というのがグッジョブ。最後の、整備部分まで含めてやるというのは自転車愛がしっかりある漫画だからかなあ、というのを感じました。
 さておき。
 残り二割の内容でいい物は、その1『Climbing!』。ちょっと珍しい縦長のコマが重層的になるのが大変印象的な回でした。内容的には生活感あるもので、ちょっとファンタジーなのになりそうなのにそこまで押さない辺りが短編としての出来上がりに貢献していたかと思います。あとがきでは登るより降りる方に使った方がいいかも、と書かれていましたが、いやいや上に向く感じというか、上が抜けている感じは結構面白かったですよ。と伝えたい所です。降りる方も確かにいいなとは思いますけれども。そう言う漫画って中々出て来ないから、もしやれそうならきっちりやってみていただきたいと思ってしまいます。願望を持つくらいはいいでしょ?
 さておき。
 カラーでの中村哲也仕事、ワンカットとかは大変眼福です。エロス的な意味で。直接的なエロスじゃないからこそ感じられるこのエロス。バニーのエロさというのがこうもしっかり出されると、蒙が啓けるとはこのことか。と感じました。ナイチチバニーもいいけど、やっぱりアリチチバニーだよな……。
 とかなんとか。