感想 『ガールズ&パンツァー コミックアンソロジー SIDE:継続高校』


ガールズ&パンツァー コミックアンソロジー SIDE:継続高校
(画像、文章リンク共にAmazonの物理書籍のページに)

 大体の内容もなにもアンソロジーだよ! ということで、『ガールズ&パンツァー』、継続高校サイドのアンソロであります。継続高校というとミカさんの謎めいた謎めいた感じが謎めいて謎めいていますが、そのある種ブラックボックスに挑むことになった作家さん方には気の毒というかいいハードルだなあとか、変な風に感じたりしますが、そのハードルをきっちり超える、上回るテクさを見せている、そんなアンソロジーなのです。
 このアンソロジーの中でどれがいいか、というのは大変難しいです。基本的にどれも卓抜しているのです。「You still have lots more to work on」なのもあるにはあるんですが、それも一握り、というか一つ。それだけレベルの高いアンソロジーとなっているのです。その全部を紹介すると冗長なので、あえて! と見出しを付けて5作品を俎上に上げようと思います。
 ということで、それではいってみましょう。

PAPA『くらし継がれて』

 アキさんが「タンクジャケット欲しい!」という話。そういう話をしながらも、色々と目端の利いた技前を見せる一品。このアンソロジーでは唯一の1ページ二本形式の4コマでもあります。*1
 味わい深い点はやはりミカさんというブラックボックスの扱いが実に優れている点。余裕ありげで意味ありげな彼の人と、アキさんミッコさんの対応が素晴らしく決まっています。決まっているというかいなされていると言うべきかもしれませんが、その辺がうまく操縦出来ている、とこそ、言うべきかもしれません。個人的に自分がイメージングする継続高校のそれと漸近していると感じました。ミカさんのたらし的なところとか、それにたらされるアキさんとか、わりとC調なミッコさんとか、こういう感じだろうか、と思ってたのがそこにあったという印象です。

原田靖生『ミルスキヤミルスキ』

 練習戦を前にして、継続高校の偵察に来たのがペパロニローズヒップ! ということでバタバタする話。もうこの二人がでるというだけでどうなるかうかがい知れようものです。
 見どころは偵察に来たのなら、逆に偵察すればいいじゃない。というミカさんの下知のもと、いい感じに歓待して探りを入れる、そのハイテンションとしか言いようがない変なノリ。カンテレをハイテンポで弾くミカさんは必見。後、ペパロニローズヒップが上役を信頼している、というのに上役はあんまり信用していないから布陣情報持たせてない、という非対称性もよかったです。まあ、どっちもその日に言った方がよさそうな印象がありますから、しょうがないですね。その後のオチも更に決まっていて本当にしょうがないですね。ペパロニローズヒップからしょうがない。

チョモラン『それは熱が起こすもの』

 焼! 肉! 歓待される継続高校! 焼肉は火力! というのがありつつも。
 これは一つ反則だと思います。継続高校の面子は出ているものの、実際の主役はカメさんチーム&アヒルさんチーム。これはまずいですよ! ですが、劇場版のあったかもしれない一面をきっちりと、という意味ではそのカメさんチームスキーにはたまらぬものがあるかと。個人的には桃さんが好き、参謀役に見えて猪突猛進でしかしヘタレだけど杏さんに信を置きすぎていて、という桃さんが好きなので、そう言う意味では大変良いものでございました。バーター感があるとはいえ、ミカさんもきっちりと仕事していたのもよかったです。でも反則だよな。

ホリ『サウナ・ウォー』

 知波単と、サウナで勝負! という事ではなかったのになぜか勝負になって取り残される西さん。はてさてその顛末とは。という話。
 上記通り、ただ入ってただけなのにいつの間にかサウナ対決に勝手になっている辺りが、流石の知波単クオリティです。あの人たち本当に前向きすぎます。で、継続の源流はサウナ発祥の国フィンランドだから、サウナは普通に強い、というのでこの話大丈夫なのか、と思ったら、ミカさんがいつものように意味ありげに言いつつするっと出て行って万事OK、という運びかと思ったまだミッコさんがいたでござるの巻。この辺の段階的な落とし方が楽しかったです。そして大オチ。ナチュラルな窃盗!

すきま『となりの隊長は立派に見える』

 アキさんとまほさんの語らい。題の通り、となりの隊長は、立派に見えるけど、でも自分の所だって。という感じでまとまりますが、この話の肝はまほさんの上司として、そして上級生としての考えでしょう。ガルパンというのが、3年でいなくなる、高校生選手という存在の話、という部分はほぼ本編ではされませんが、だからこそこういうアンソロジーできっちりとその辺を提示してこられると、どうにも弱いんですよ。自分がいなくなった時の黒森峰に何が残せるか、というのを考えるまほさんというのが、とてもいいものがあるなあ、と。黒森峰にはないものがある大洗。それに近い継続。だからこそ継続と練習戦をする。それで何か残せるはずだ、というのがもう。こういうのどちらかというと大好き。

総評

 先に書いている通り、ミカさんというブラックボックスをどうこなすか、という部分でも見れるし、きっちりガルパンのサイドストーリーとして感じてもいいし、というので大変ようございました。SIDEアンソロ、残りもそろえよう。

*1:1ページ1本方式なら4コマはもう一つ。