感想 内藤泰弘 『血界戦線 back 2 back』2巻


血界戦線 Back 2 Back 2
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「ライブラ史上最悪の閉め出され事件! 他二本」。b2bシリーズ第二巻目となる今巻は、ライブラ本部がいきなり奪われるという大事件と、やばい爆弾を取り戻す為に飲み勝負する回、そしてスティーブンさんの裏の顔が見られる一篇の三段ドロップという、ちょっと変わった斜め上の日常譚、というには斜めの角度きつすぎやしませんかねー! というものとなっております。一つずつ見て行きましょう。
 ライブラ本部が奪われる、という大事件の回『ゲット・ザ・ロックアウト!』前後編は、その奪った相手というのが大変とんがっております。ライブラをつけ狙うとか、敵対するとか、そういうのではないのです。その奪った相手、というのは一介の虫。フォルムからすると蚊です。わりとミルコ・クロコップ顔でお前は何を言っているんだ、と思われるでしょうが、本当に蚊なのでどうしようもありません。本当に、蚊がスティーブンさん謹製の物に触れたせいなのか、一気に大進化を遂げ、神化すらしそうになっていたのです。んな無茶な、と思いますが作中世界、ヘルサレムズ・ロッズは常識の通じない世界。いきなり蚊が神化してもおかしくないのです。
 そういうわけなので、いつもはその堅牢さを誇るライブラ本部を、外から攻めるということになるんですが、その攻め方が防衛機能の若干の隙、こういうことがあった時用に作られていた隙、を突いて、登攀からの正面突破という、これまた常軌を逸していることに。クラウスさんは大概無茶な人ですが、今回も当然無茶でありましたよ。ほんの少し隙が出来る、といってその隙に潜り込めるかどうかってのは、なんですが、やってしまうんですよねえ……。この辺りはさすがとしか言いようがない。でも、これくらいはちょっと無茶な方、って言ってた辺り、ライブラ全体がちょっと頭おかしいですよ。
 さておき。
 やばい爆弾を回収する為に一気飲み勝負する『バッカーディオの雫』はヘルサレムズ・ロッズの頭のおかしさがしっかり感じられる一作。<バッカーディオの秤>という組織に渡ったやばい物。それを取り戻す為にやることが飲み勝負、というのでもう何を言っているのか分かりませんが、その勝負でサマをしているというのが発覚。そのサマの仕方が、酒にやばい寄生虫の卵を、というのでもう何が何だか。そして、それを飲むことになるチェインさんの対処法がまた。これは書きだすのも色々なんなので是非見ていただきたいですが、それに対してちょっとこっちもオーディエンスと同じアトモスフィアになっていた、ところにクラウスさんの台詞で身が引き締まるのも含めて、一見の価値はあると思います。
 さておき。
 スティーブンさんの話な『ミッドナイト・ブルー』は、これもまた見てください! とシャクティ声になるタイプの話。きっちり書くのもいいんですが、それよりも予断なく、あのシーンのスティーブンさんの目を見ていただきたい。まっとうに見える部分もあるけど、ライブラもそんなにまっとうじゃない。というのが分かるかと思います。こういう話をきっちり入れてくる辺り、内藤てんてーもギアが上がってきていますよ。たぶん。
 とかなんとか。