ネタバレ感想 ビリー 『シネマこんぷれっくす!』1巻


シネマこんぷれっくす!(1) (ドラゴンコミックスエイジ)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

大体の内容「この年の女子が映画好きをこじらせておられる……っ!」。映画大好き熱田鰐人君は高校に入ったばかり。映画みたいな青春がしたいという、もうその台詞段階で送れないな。と察せる夢を見る鰐人君ですが、某スターってウォーズる小道具に引き寄せられ、映研、学校での通称は<死ね部>に遭遇。グラサンの下は美人だけど基本がグラサンな時点でお察しの黒澤さん、典型的カンフー馬鹿花村さん、物静かなクソ映画礼賛者宮川さんの女性先輩ジェットストリームアタックとおっぱい、後、駄目部活を盛り上げるのは青春映画じゃないか? という甘言にうっかり乗って、その映研に所属することになります。それから始まる、駄目映画好きの駄目さ加減がしっかり出る毎日。それが『シネマこんぷれっくす!』なのです。
映画が好きで、こじらせているけど女の先輩、という良いのか悪いのかのラインを綱渡っているところが特に持ち味なこの漫画の女性陣ですが、個人的には普段は寡黙で話題に積極的には混ざらない宮川さんが一瞬好みでした。何故一瞬かというと、先にも書いていますがクソ映画礼賛者である、のならまだいいんですが、彼女は懐に『デビルマン』を忍ばせているという言葉にしただけでもあかんやつや……っ! ってなるお人だからです。懐に『デビルマン』のパワーワードっぷりだけでもアレなんですが、それ以上にまず『デビルマン』をつっこみを誘いつつ見せてクソ映画の楽しみ方を教えつつ、クソ映画の殿堂へと誘おうとする辺りが質が悪すぎます。沼にはめるにしてもその沼、オール地獄じゃないですか! という。黒澤さんも宮川さんの出す映画の攻め方で相対するには鰐人君のレベルが全然足りない! レベル1で魔王と戦おうとしてるやつや! と的確に表現をしていて、宮川さんの恐ろしさ、というか狂気の度合いがヤバいと感じさせてくれます。最終的に『プラン9・フロム・アウタースペース』に辿り着いて流石に鰐人君もギブアップとなってその話は終わりましたが、宮川さんが常に『デビルマン』を懐に所持している、という事実は我々は忘れてはいけません。
それはさておき。
この漫画の良さはそういうキャラクターの良さがかなりの部分を占めています。三人娘+1の小津さん(鰐人君に気があるっぽい)という女性陣の良さと、基本ボケの多い中でボケにもツッコミにもなる鰐人君の緩衝帯としての立ち位置が綺麗に決まっているのが、この漫画を楽しく読ませられる一因と言えるでしょう。そんな彼ら彼女らが映画についての話を適当に白熱させたり、白熱し過ぎてやっぱり映画は一人で見るものだって決着して映画見ずに帰ったりなどするのが楽しいのです。こいつら、楽しそうだなあ。輝かしい青春という感じじゃないけど、でもいい時代だぞ、それ。と言ってあげたい。鰐人君は全力でこれが輝かしいなんて! って否定して三人娘にひどい目にあわされそうですが、でも本当に、そういう環境って、いいものなんだぞ……。と適当なことを〆の言葉とさせていただきます。